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脳梗塞の再発予防効果がある手術

これでコワくない! 脳梗塞の予防&治療の最前線

血液をサラサラにするには?脳梗塞の再発予防

手術

脳梗塞は再発の可能性が高い病気です。再発予防は生活習慣の改善が基本ですが、手術で再発リスクを抑える方法もあります。どんな内容の手術なのか、また、どのように脳梗塞の予防に効果を発揮するのか、見ていきましょう。

 

内科治療では不十分な場合に手術が有効

脳梗塞は血栓や血管の狭窄により、脳への血液供給がストップしてしまうことにより起こります。その原因のひとつが動脈硬化です。つまり、動脈硬化を改善し、血栓の発生を防ぐことが、脳梗塞の予防につながるのです。アスピリンやワルファリンなど、血液を固める作用を持つ血小板や凝固因子のはたらきを抑える薬で、血栓ができるのを防ぐことはできます。もちろん、食生活の改善や運動不足の解消によって、高血圧や脂質異常症など動脈硬化の原因を正すことも、長期的な予防には有効です。

しかし、こうした予防方法では早期の状態改善は望めないため、外科手術によって物理的に原因を取り除くという方法もあります。薬による治療や自己管理では十分な結果が得られなかった場合、再発の可能性が高い危険な状態を脱するためには有効な選択肢です。

ただし、この手術は再発の原因を取り除くものであり、すでに起きてしまった脳梗塞を治すものではありません。また、患者さんへの負担も大きいため、手術を希望していても、体力的に不安がある方や、持病がある方は、医師の判断により施術を受けられないことも考えられます。手術による合併症のリスクもゼロではありません。あくまでも手術は最終手段であり、内科治療や生活習慣の改善によって予防していくのが基本ということは忘れないようにしましょう。

脳梗塞の再発予防手術には、症状に合わせていくつかの種類があります。代表的なのが、頸動脈内膜切除手術、頸動脈ステント留置手術、そしてバイパス手術の3つです。方法はそれぞれ異なりますが、どれも血栓や血管狭窄によるリスクを軽減し、スムーズに血液が流れるよう調整する効果が期待できます。

頸動脈内膜切除手術

頸動脈内膜切除手術は頸動脈内膜剥離術、またはCEA(carotid endarterectomy)とも呼ばれます。頸動脈にできた血栓やアテロームを切除する手術です。

アテロームとは、白血球が血液中のコレステロールを食べた後の死骸が溜まってできる粥状の塊のことで、血栓のもとでもあります。頸動脈で作られた血栓が脳まで運ばれ、脳の細い血管に詰まることで脳梗塞を発症するため、頸動脈の血栓とアテロームの除去は、脳梗塞の再発予防を考えるうえで重要です。

・手術内容

頸動脈内膜切除手術は、全身麻酔をしたうえで行われます。頸部のしわに沿って10センチほどメスを入れて動脈を露出させ、血栓やアテロームができて分厚くなった血管の内膜を直接取り除きます。血管を切開するため、一時的に脳への血流はストップしてしまいますが、3~5分という短時間で済むため、安全性にはほとんど問題ありません。手術自体には、2~3時間程度かかるのが一般的です。

・効果

この頸動脈内膜切除手術は、脳梗塞の再発予防に有効性が高い方法で、症状の有無や狭窄率にかかわらず、ほぼ確実に脳梗塞発生のリスクが低減されることがわかっています。たとえば、すでに脳梗塞の自覚症状があり、かつ頸動脈に70~99%の狭窄が見られた場合、脳梗塞の危険率は26%から10%未満まで減少します。脳梗塞の原因を物理的に取り除けることで、発症リスクを抑えることはもちろん、術後の薬物治療においても、抗血小板薬の1種類のみで済むようになるため、負担も軽減されるでしょう。

・危険性

全身麻酔が必要なため、麻酔に耐えられる体力がない方や、呼吸器の問題で気道の確保が難しい方は、手術を受けられません。また、まれに手術中、血栓がはがれて飛んでいくことで脳梗塞を起こしたり、舌下神経に触れてしまうことでマヒや舌が曲がるなどの合併症が起こったりする危険があることも覚えておきましょう。

頸動脈ステント留置手術

CAS(carotid artery stenting)と呼ばれることもあります。頸動脈内膜切除手術(CEA)と同様、血管内の血栓やアテロームによる血行不良を改善させる手術です。大きな違いは、頸部の切開と全身麻酔が不要という点にあります。

・手術内容

頸動脈ステント留置手術は、局所麻酔で行います。「ステント」とは、表面が細かい網目状になった、筒形の小さな医療器具のことです。これを、カテーテルと呼ばれる管を使って、動脈硬化を起こしている血管へと運びます。バルーンで広げておいた血管にステントを設置することで、血管を内部から押し広げ、正常な血流を確保することが可能です。

ステントの設置により、血管壁に溜まっていたアテロームは押しつぶされます。過去には、欠片が脳に飛んで小さな脳梗塞が起こってしまうこともありましたが、現在は「プロテクション」といって、傘のようなフィルターでつぶされたアテロームの破片を回収しているため、合併症のリスクはほとんどありません。

・効果

ステント留置手術は、大きな傷を作る必要がなく、全身麻酔の必要もないことから、患者さんにとっても負担の少ない方法と言えます。入院期間も内膜切除手術に比べると少なくて済み、早い復帰が望めるでしょう。さらに、頸動脈内膜切除手術では届かない深い場所にある血管にも処置が可能なのも強みです。

・危険性

血管にカテーテルを通す必要があるため、血管が蛇行・屈曲している場合、設置が難しいケースもあります。カテーテルが血管に触れて、傷を作ってしまう可能性があるからです。特に高齢の方は血管が蛇行しているため、頸動脈内膜切除手術のほうが適していることがあります。

バイパス手術

「バイパス」というと車の迂回道路を思い浮かべる方が多いと思いますが、この場合、脳の中に血管のバイパスを作る手術です。動脈硬化で流れが悪くなった血管を別の血管とつなぎ、脳へ流れる血液の経路を増やすことで血流を改善させます。動脈硬化が脳の広範囲にわたっていて、頸動脈内膜切除やステント留置による部分的な処置が難しい場合に有効です。

・手術内容

バイパス手術は全身麻酔で行われます。頭蓋骨を開いて、表面を走っている健康な動脈と、詰まって機能が弱まっている動脈をつなぎ合わせます。これによって、脳への血液供給を健康な血管が担うようになるため、脳梗塞のリスクが解消されるのです。

・効果

非常に大がかりな手術にはなりますが、バイパス手術を行うことで、脳梗塞が再発する確率は70%以上抑えられると言われています。術後には、再発率の低下だけでなく、視力が戻ったり、言葉がはっきりしたりといった症状の改善がみられた例も多いです。

・危険性

バイパス手術は非常に高い効果が期待できますが、頸動脈内膜切除手術と同様、全身麻酔が必要なため、患者さんの体への負担が大きい手術です。体力に不安がある場合は、受けられないこともあります。手術・入院に必要な期間が長いため、費用についても考慮する必要があるでしょう。また、1~2%ほどの確率で、死亡、または合併症(脳梗塞)発症)のおそれがあります。

手術は最終手段として選択を

脳梗塞の再発予防に有効な3種類の手術をご紹介しました。脳梗塞の原因となる動脈硬化を、外科手術によって物理的に解消することで、再発のリスクを大きく抑えることが可能です。ただし、手術には、体力的にも金銭的にも大きな負担がかかります。また既往歴や全身状態によっては手術ができない場合もあります。脳梗塞の予防には、野菜や果物の多い食生活を心がける、定期的に運動をする、禁煙をするなど、日常生活を整えることがもっとも大切とされています。手術に頼らなくても済むように、日ごろから再発予防に取り組んで、脳梗塞のリスクを減らしていきましょう。

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