よくわかる脳梗塞の予防・治療Navi

日常生活の中でできるリハビリ

元の生活を目指して……脳梗塞のリハビリ治療

日常の中でも様々なリハビリを行なうことができる

専門施設や専門スタッフによるリハビリ以外にも、日常生活で行なうことができる有効なリハビリはたくさんあります。ここでは脳梗塞の後遺症に対するリハビリとして、日常の中で行なえる言語障害のリハビリ、および摂食・嚥下障害のリハビリについて詳しくご紹介します。

日常生活のあらゆる動作が大切なリハビリ

理学療法士や作業療法士が専門的に行なうリハビリだけではなく、生活の中で日常的に行なわれる動作もまた大事なリハビリとなります。衣服の着脱、入浴、排せつ、車椅子への移乗、車椅子での移動、歩行、整容、食事等々、日常で展開されるあらゆる動作が脳梗塞の後遺症に対する有効なリハビリです。

維持期に入り帰宅した直後は、介助者が不慣れなこともあり、日常の動作がうまくいかないことも多いでしょう。患者本人が自暴自棄となり、日常でのリハビリを諦めてしまうケースも見られます。しかしながら、それでもあきらめずに日常リハビリを続けていれば、やがて患者本人と介助者とのスムーズな協力関係が構築されていき、徐々に患者が一人でできることも多くなっていきます。

もちろん、脳梗塞によって壊死した脳細胞が回復することはないので、リハビリを通じて脳梗塞の発症前と同じ状態にまで日常動作が回復することはありません。ただ、多くの患者の場合、日常におけるリハビリを通じて麻痺と上手に付き合っていける程度までは機能が回復します。機能が一定レベルまで回復するまでには非常に長い時間がかかりますが、あきらめずにリハビリを続けることの大切さを、介助者は本人にしっかりと伝えましょう。

構音障害・失語症に有効なリハビリ

脳梗塞によって発症する言語障害は、大きく分けて構音障害と失語症との二種類があります。いずれも明瞭な発話・発声ができないという点で共通していますが、医学的にはまったく別の病気です。

構音障害とは、脳梗塞の影響によって発話に必要な運動機能が麻痺した状態。意志も明確で、相手が話していることも十分理解できているのですが、舌やアゴなどの筋肉の障害のために会話が難しい、という症状です。

一方で失語症とは、大脳の言語中枢が侵されてしまっている状態。自分の意志を言語で伝える、他人の発した言語を理解する、といった言語活動全般に困難をきたす症状です。

構音障害の場合、口内の運動機能の回復が少々難しいため、発話能力を向上させるリハビリには限界があります。しかしながら理解力も意志も明瞭なので、発話や発声を補助する道具を使ったリハビリを積極的に行なうほうが現実的です。具体的には、筆談やトーキングエイド(押した文字が音声になる道具)などを通じ、よりスムーズにコミュニケーションをとれるようにしていきましょう。

失語症の場合、構音障害とは違って口内の運動機能が残っているため、リハビリを続けていれば、少しずつですが発話能力が向上していきます。専門病院でリハビリを受け続けることが最も理想的ですが、日常生活でも、日記日付や天気の記載だけでも良い、囲碁・将棋、絵手紙などを楽しむことは失語症の良いリハビリとなるでしょう。

なお、失語症の方に何かを尋ねるときは、なるべく「はい」「いいえ」で答えられる形に質問文を構築してください。「何を飲みたい?」ではなく「お茶を飲みたい?」といった具合です。また、五十音表や絵、写真などを見せながら会話をすれば、言葉だけを使う場合に比べてコミュニケーションが円滑になります。

嚥下障害に有効なリハビリ

脳梗塞などの影響で上手に飲み込みができない症状のことを嚥下障害と言います。嚥下障害になると、それまで普通に摂食できたものを上手に食道へと送りこむことができなくなり、誤嚥性肺炎や窒息を招く恐れもあります。入院中は言語聴覚士によって専門的な立場から嚥下障害のリハビリが行われますが、帰宅して維持期に入ってからは毎日の3食が大事なリハビリとなります。嚥下機能が概ね回復するまでの間は、万が一の事態に備えて、食事を患者一人で摂らせないようにすることが大切です。

一方で、嚥下機能をより早急に回復させるための「嚥下体操」と呼ばれるリハビリもあるので、ぜひ毎日実践していきましょう。

「嚥下体操」は、8段階の運動によって嚥下機能の回復を図るリハビリ。各段階は以下の通りです。

  1. ①深呼吸
    お腹に手を当てて、深く深呼吸をします。
  2. ②首の運動
    首を前後左右に動かします。
  3. ③肩の運動
    両肩の上げ下ろしをします。また、頭上で両手を組んで左右へ揺らします。
  4. ④舌の運動
    舌を出したり、左右に動かしたりします。
  5. ⑤頬の運動
    口を閉じ、空気をためたり抜いたりしながら頬を動かします。
  6. ⑥発声の運動
    カカカカ、タタタタ、パパパパと発声します。
  7. ⑦食道の運動
    何かを飲み込むときの要領で「ごっくん」としてみたり、また、咳をしてみたりします。
  8. ⑧深呼吸
    お腹に手を当てて、深く深呼吸をします。

以上の8段階の運動を、毎食の前に1日3回は行なうようにしましょう。嚥下に自信がない人は、食事とは関係なく普段から何度でも行なうようにしたいところです。あわせて、口角を引き上げるように口元の筋肉をほぐす「口腔買いマッサージ」も嚥下リハビリには有効なので、ぜひ試してみてください。

家庭でのリハビリのポイント

日常生活の中でのリハビリには、4つのポイントがあります。これらのポイントを守ることで、より一層、後遺症への改善効果を高めることができるでしょう。

・専門職の方に相談してから行う
知識がないままリハビリを行うと、体へ負担をかける、後遺症に対して逆効果になるなどの危険があります。病院やリハビリセンターには、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士、視能訓練士などの専門職の方がいるので、相談してアドバイスを貰ってから行ってください。

・目標を持って行う
漠然とリハビリを行うよりも目標を持って取り組んだ方が、長期的に継続することができ、リハビリの効果も高まります。ひとつの動作ができるようになったら、次にできるようにする動作を決め、それを目標としてください。

・少しずつ継続的に行う
一回で長時間のリハビリを行うよりも、毎日少しずつ継続して行う方が効果を期待できます。また、一度に長時間のリハビリを行うと、関節や筋肉を傷めてしまう可能性もあるので注意が必要です。

・回復を焦らずに行う
脳梗塞発症直後の急性期と回復期は、比較的順調に後遺症が回復するものです。ですが、維持期に入ると回復は遅くなります。リハビリの効果が感じられなくても、焦らずに続けることが大切です。

起き上がりの方法

1.ベッドの上で両膝を立てて、膝を倒すようにして体を麻痺がない側に倒します
2.ベッドの柵を握りながら肘をついて、膝を伸ばしたら、そのまま足をベッドの外に出します
3.肘に体重をかけて体を支えながら上半身を起こす
4.足を下に降ろしながら、体を起こして座る

ベッドから起き上がるときには、ベッドの柵や体の回転、てこの原理を利用するとよいでしょう。もし麻痺した方の足を降ろせない場合は、麻痺していない方の足で動かしてください。

立ち上がりの方法

1.深くお辞儀をするように上半身を倒し、ゆっくりと腰を上げる
2.足で体重が支えられていることを確認する
3.そのまま膝と腰を伸ばして立ち上がる

立ち上がりのときは、膝を直角に曲げることがポイントです。また、深く座り過ぎていると立ち上がりにくいので、適切な座り方から立ち上がるようにします。立ち上がりが難しいようなら、前に椅子を置いて、手をつきながら行ってください。

着替えの方法

・ボタンつきのシャツ
1.麻痺がない方の肩から服を外す
2.そのまま麻痺がない方の肘を外して、腕を抜く
3.麻痺している方の腕から、手繰りながら抜く

・ボタンなしのシャツ
1.手で背中側をたくし上げる
2.襟部分を持って上に引っ張る
3.そのまま服から首を抜く
4.麻痺がない方の腕から順番に服を脱ぐ

・ズボン
1.お尻を交互に浮かせながら、少しずつズボンを降ろす
2.麻痺がない方の足からズボンを外す
3.そのまま前かがみで麻痺側の足からズボンを外す

洋服を着るときには、この手順を反対から行います。いずれも、安定した姿勢で座りながら行うことが大切です。

食事の方法

手が上手く動かせない方は、自助具を使用するとよいでしょう。スプーンやフォークを手にはめられるホルダーや、ピンセットの形をした箸、傾斜のついたコップなどがあります。通常のコップでも、大きな取っ手のついたものを使えば、握力が弱くても使用できます。
また、食器の下に滑り止めのマットを敷けば、片手でも食事がしやすくなります。食事では誤嚥をしないように、良い姿勢で食べることを心がけてください。

入浴の方法

・浴槽への入り方
1.シャワーチェアーを浴槽の真横に置く
2.麻痺のない側が、浴槽側になるように座る
3.麻痺のない側の足を、少しずつずらしながら浴槽に入れる
4.浴槽の淵に座る
5.麻痺側の足を手で持ち上げる
6.手すりを握って立ち、浴槽の中に座る

・浴槽からの出方
1.手すりにつかまって立ち上がる
2.浴槽の淵に座る
3.手すりを握ったまま体を回転させる
4.麻痺側の足を手で持ち上げて浴槽から出す
5.シャワーチェアーに座る

入浴を一人で行う場合は、シャワーチェアーと浴槽の間に隙間ができないように気をつけてください。また、拘縮がある際には、指の間の汚れを綺麗に洗うように注意します。

排泄の方法

ベッドの横に置ける、ポータブルトイレを使用した排泄方法について紹介します。また、軽度の麻痺で立ち上がることができる方は、介助用バーを使用して排泄を行うこともできます。

1.トイレをベッドの真横に置く
2.ベッドに座ってズボンを降ろす
3.お尻をずらすように移動させながら、ベッドからトイレに座りなおす
4.用を足す
5.ベッドに移動してズボンを穿く

歩行の方法

1.杖を持って姿勢よく立つ
2.麻痺している方の足を杖と同時に前に出す
3.杖をつきながら麻痺のない足を前に出す

介助者と杖歩行を行うときには、身体を密着させながら、本人の体を左右に揺らしてサポートしてあげましょう。この歩行は「2動作歩行」という歩行法です。「杖を前にだしてから、麻痺側の足を出し、麻痺していない側の足を出す」という3段階の歩行法ができるようになったら行ってください。

先輩はどのように立ち向かったのか

事例は異なりますが、脳梗塞に立ち向かった先輩方や、その御家族がどんな取り組みをされていたのかを知ることはとても大切です。脳梗塞で倒れ、現在は復帰してプロスカウトをされている、元プロ野球選手の「柏原純一」さんと奥様の体験談をご紹介いたします

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