よくわかる脳梗塞の予防・治療Navi

脳梗塞の治療にボツリヌス治療

元の生活を目指して……脳梗塞のリハビリ治療

脳梗塞後の後遺症対策にボツリヌス治療

脳梗塞が起きた後の後遺症で注意したいのが、筋肉や関節が固まってしまうことです。この対策として利用できるのが、ボツリヌス治療です。家族が脳梗塞になってしまった方も、知識として取り入れながら後遺症対策をしましょう。

ボツリヌス治療とは?

脳梗塞を発症し回復期になると、痙縮(けいしゅく)と呼ばれる後遺症が出る場合があります。痙縮とは筋肉が過剰に収縮することであり、手足が内側を向いたり握った状態になったりして、動作を妨げることです。痙縮が起こる原因は、急性期から身体を十分に動かさなかったためです。脳梗塞を発症後1~2か月ごろ脳内で新しい神経伝達ネットワークができますが、リハビリが不十分だと筋肉が縮む状態でネットワークができてしまいます。さらに放置すれば拘縮(こうしゅく)と呼ばれる、筋肉や関節が固まった状態になるのです。これを防ぐための対策がボツリヌス治療となります。

ボツリヌス治療とは、ボツリヌス菌が作りだす天然のたんぱく質である「ボツリヌストキシン」を筋肉に注射する方法です。この成分は筋肉を緊張させている神経伝達物質の「アセチルコリン」を抑える働きがあります。ボツリヌス菌は食中毒の原因菌ですが、注射に使うのはボツリヌス菌自体ではないため感染することはありません。治療法は世界80か国で認められ、日本では様々な治療にも活用され、これまで9万人の人が利用してきました。2010年に上肢・下肢の痙縮で保険が適用され、脳梗塞の後遺症対策にも使うことができます。

ボツリヌス治療の効果

ボツリヌス治療を利用すると、筋肉が縮むのを抑えられ、リハビリや日常動作がしやすくなります。筋肉が固まってしまうのを防ぎ、筋肉が柔らかくなることで、スムーズに動くようになります。痛みを緩和させる効果も期待できます。患者さんにとって良い効果が出るだけでなく、介護の負担も軽減できる治療です。ボツリヌス治療のメリットは、脳梗塞発症から6か月以上経っていても、何年も経過していても効果があることです。後遺症で手足が硬直し動かせなかった人で、ボツリヌス治療を開始して生活の質が向上した患者さんもいます。

ボツリヌス治療の効果を95人の患者さんで調査をしたところ、40%の人が下肢装置の必要性がなくなったという結果が出ています。また、別の上肢や下肢の麻痺にボツリヌス治療を行った臨床試験では、筋肉の緊張の減少を確認しており、上肢の着衣動作が改善され下肢では歩行速度が上がりました。

脳梗塞の麻痺に対する治療は、リハビリテーションと中枢性弛緩薬の経口投与も利用されています。飲み薬の場合量が増えると、脱力などの副作用があります。また、神経をブロックする注射の場合でも、狙った場所に注射しなければならず実施できる医師の数が限られている問題がありました。一方、ボツリヌス治療の場合は、注射の難易度が低くいことから注目されている治療法です。

ボツリヌス治療の開始時期

ボツリヌス治療は脳梗塞発症後、3か月ごろから受けます。治療の効果は3~4か月で消えるため、繰り返し治療を利用する必要があります。しかし、効果が持続する期間は個人差があるため、医師と相談しながら必要な期間で治療を受けましょう。

ボツリヌス治療はリハビリテーションと兼用する治療で、これまでできなかった動作がしやすくなります。脳梗塞を発症し早期のころに何度か治療を受けるうちに、注射の必要性がなくなる患者さんもいます。治療は外来利用できるほか、入院してリハビリテーションを受ける方法が利用可能です。ボツリヌス治療によりリハビリや日常動作が行いやすくなりますが、薬の効果が切れてしまうと再び筋肉の緊張が起こり始めます。そのため、注射後にしっかりとリハビリを行うことが大切です。

ボツリヌス治療の費用

ボツリヌス治療は生物製剤のため、治療費が高額になります。保険が適用され3割負担や1割負担で済みますが、自己負担分でも高額となる場合があります。治療費は投与量や自己負担の割合により金額が変わるため注意してください。なお、身体障害者手帳を持っており、現在医療費が無料の方は自己負担がありません。また、減額となることもあるため確認してください。

治療費の目安は3割と1割でつぎのとおりです。

・3割・・・約7~10万円

・1割・・・約2~4万円

ボツリヌス治療の効果は3~4か月程度なので、1年に2~3回治療を受ける必要があります。治療間隔は患者さんによって異なるため、医師と相談して決めてください。なおリハビリテーションの治療費用は別途必要になります。また、治療費が高額になった場合、高額療養費制度が利用できます。自己負担額が一定金額以上になった場合に受けられる制度で、払い過ぎた医療費の払い戻しが受けられます。身体障害者手帳を取得している場合には、自己負担額の全額または一部が免除されることもあります。こうした制度を上手く活用してリハビリに臨みましょう。

先輩はどのように立ち向かったのか

事例は異なりますが、脳梗塞に立ち向かった先輩方や、その御家族がどんな取り組みをされていたのかを知ることはとても大切です。脳梗塞で倒れ、現在は復帰してプロスカウトをされている、元プロ野球選手の「柏原純一」さんと奥様の体験談をご紹介いたします

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