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脳梗塞の後遺症として起こる言語障害とは?

脳梗塞の後遺症を乗り越えるために~症状と対策法~

言語障害

脳梗塞によって脳の特定の部位に損傷を生じると、言語機能に障害が出ることがあります。ご家族が言語障害を発症したら、どのようなリハビリ治療法を受けることができるのでしょうか。脳梗塞による言語障害の症状や、リハビリの手法についてご紹介します。

脳梗塞で言語障害が起こるケース

脳梗塞の後遺症として起こる言語障害には、大きく分けて「失語症」と「運動障害性構音障害」の2つのタイプがあります。

・失語症
失語症とは、脳梗塞によって大脳の言語を司る領域が損傷を受け、言葉を上手く扱うことができなくなる症状です。失語症の患者さんは、「聞いて理解する」「話す」「読む」「書く」といった言語にまつわる4つの機能のいずれか、または全てに障害を受けており、それぞれの障害の程度は脳梗塞による損傷の程度によってバラつきがあります。

・運動障害性構音障害
運動障害性構音障害とは、脳梗塞によって脳幹または脳幹につながる神経線維が損傷を受け、その結果として唇や舌などに麻痺を生じ、言葉を上手く発音できなくなる症状です。運動障害性構音障害は単に発声の機能上の問題ですので、耳で聞いて理解する能力・目で読んで理解する能力は健在です。利き手に麻痺を併発していない限りは、運動性構音障害で言葉が発せなくなっても筆談でコミュニケーションを取ることが可能です。

失語症のリハビリ

失語症は目や耳から入ってきた情報を理解するのが難しい症状。聞いて理解するための練習を積み重ねて、言語を扱う感覚を取り戻せるようにサポートするのが、失語症のリハビリを行う目的です。そのためリハビリでは患者さんに言葉を聞かせる・文字を見せるなどの刺激を与えて患者さんの反応を引き出します。

失語症では言語聴覚士の指導のもと、聞いた言葉と目の前に広げられた絵を結びつけるリハビリを実施。言語聴覚士が「ギター」と簡単な単語だけを伝えた後に患者さんはギターの絵を選ぶことで、頭の中で情報を一致させます。

専門のスタッフだけでなく、周囲の方とのコミュニケーションの中で患者さんがうなずいたり首を振ったりといった反応を返すのも一種のリハビリだと言えます。

ただし失語症の回復には個人差があり、頑張ってリハビリを行っても話す機能を取り戻せない患者さんも少なくありません。話しかけたり絵や文字を見せたりした時の反応を見るだけでは、患者さん自身の思っていることも伝えにくくなる可能性も。そのため、言語だけでなく他の方法でも意思疎通ができるよう、身振り手振りや絵を取り入れた総合的なコミュニケーション方法を学んでいくこともあります。

構音障害のリハビリ

運動障害性構音障害の場合は、口や舌の運動や発声練習、ゆっくり区切って話す方法の訓練などを中心にしたリハビリを行い、発声機能の回復を目指します。いずれの場合も、言語聴覚士の指導によるリハビリで障害の改善を試みると同時に、残された機能で不自由なく生活する方法を学んでいきます。重度の障害が見られる患者さんの場合は、意思疎通を行うために五十音表の使用や声を出すのをサポートする機器を使用することで、不自由ない生活を送れるように勧めることも。ある程度のリハビリを終えて退院した後は、ご家庭での日常生活の声掛けや会話が大きなリハビリになります。

言語障害の症状

言語障害の症状の種類や重症度は、脳梗塞によって損傷を受けた脳の部位によってそれぞれの患者さんで大きく異なります。以下に、失語症と運動障害性構音障害の代表的な症状についてご紹介します。

・失語症
言語を司る大脳の言語領域は、「聞いて理解する」「話す」「読む」「書く」という4つの機能を持っています。失語症のうちもっとも症状の重い「全失語」の患者さんは、これら4つの機能の全てに障害を受けており、ほとんど全ての言葉を理解することも話すこともできません。

どの能力に障害が出るのかは、脳梗塞の部位や重症度によって異なります。たとえば「全失語」よりも症状の軽微なものとして、ぎこちない話し方になる「ブローカ失語」、なめらかに話せるが言葉の取り違え(錯語)が多く意味が伝わらない「ウェルニッケ失語」、比較的なめらかに話せるが、言葉の言い換えができないため時々会話困難となる「健忘失語」などがあります。

・運動障害性構音障害
「話す」機能は、声帯や舌、唇、口蓋など数多くの器官の微妙なコントロールによって成立しています。運動障害性構音障害の患者さんは、脳梗塞によってこれらの器官の一部、または全ての動作に支障をきたしています。そのため、話し方がぎこちなくなる、途切れがちになる、声と呼吸音が混じる、声を出しにくい、くぐもった声になり聞こえづらいなどの症状が表れます。

失語症の種類

  • ブローカー失語症(運動性失語)…脳の前頭葉側に障害が起きた場合に多くみられます。会話や文の意味は理解できるが、うまく話すことができない状態。話し方がぎこちないなど。
  • ウェルニッケ失語症(感覚性失語)…側頭葉側で障害が起きた場合に見られます。話し方などはなめらかであるものの、単語の間違いなどが多くみられる。聞いてその内容を理解することも困難。
  • 健忘失語…話し内容は理解できるが、単語やものの名称が出てこず、話し方がまわりくどくなってしまうのが特徴としてあげられます。
  • 全失語…聞く・話す・読み書き、のすべてに重度の障害が見られます。

構音障害の種類

声を出したり話したりするためには、口や頬の筋肉を動かす必要があります。構音障害とは、発音・発話に関わる筋肉に指示を出している脳神経がダメージを受けることによって、話せない・話しにくい状態になること。構音障害には2種類あり、症状によって名前が異なります。

  • 弛緩性構音障害…大脳や脳幹がダメージを受けた時に現れる後遺症。失語症とは違い、相手の話を理解したり頭の中で伝えたい言葉をまとめたりすることはできますが、舌や唇を上手く動かせないために声という形で相手に伝えることが難しくなります。
  • 失調性構音障害…発話に関わる筋力が低下することで、話す時のリズムが不規則になったり「ますます」「ジャラジャラ」など繰り返す音が言えなかったりといった症状が現れます。声の大きさにバラつきが出たり、震えたりして聞き取りにくい発話になります。

失語症と構音障害のちがい

話すことが難しくなるふたつの後遺症。違いは、何の能力に課題が生じているかどうかです。話すための筋力が低下する構音障害は、脳梗塞によって運動機能が影響を受けた時に現れます。一方、言葉を理解できなかったり自分の頭の中でまとめられなかったり、といった高次脳機能が低下している場合は高次脳機能が障害を負ったことで起こります。

構音障害か失語症かを診断するために、医師や言語聴覚などの専門家は患者さんの話し方や理解力に関する項目をチェック。声の大きさや話す時のリズム、声を出す時の様子から身体機能判断するのが構音障害で、「挨拶できるか」「とっさに言った言葉を復唱できるか」といった理解力をチェックするのが失語症です。

リハビリ方法

脳梗塞の後遺症で言語障害が出た場合、言語聴覚士の指導のもとリハビリを行って機能の回復を目指します。まずは、文字を見せる、呼びかけるなどして言語機能の障害の程度を確認。どの能力を向上させる必要があるか判明して以降は、話すための訓練へとステップアップしていきます。もちろん原因が異なるため、失語症と構音障害で行うリハビリには異なる点も。しかしコミュニケーションを多く取って、できるかぎり患者さんに話してもらう機会を増やすのはどちらの後遺症でも同じです。

失語症のリハビリ

失語症は目や耳から入ってきた情報を理解するのが難しい症状。聞いて理解するための練習を積み重ねて、言語を扱う感覚を取り戻せるようにサポートするのが、失語症のリハビリを行う目的です。そのためリハビリでは患者さんに言葉を聞かせる・文字を見せるなどの刺激を与えて患者さんの反応を引き出します。

失語症では言語聴覚士の指導のもと、聞いた言葉と目の前に広げられた絵を結びつけるリハビリを実施。言語聴覚士が「ギター」と簡単な単語だけを伝えた後に患者さんはギターの絵を選ぶことで、頭の中で情報を一致させます。

専門のスタッフだけでなく、周囲の方とのコミュニケーションの中で患者さんがうなずいたり首を振ったりといった反応を返すのも一種のリハビリだと言えます。

ただし失語症の回復には個人差があり、頑張ってリハビリを行っても話す機能を取り戻せない患者さんも少なくありません。話しかけたり絵や文字を見せたりした時の反応を見るだけでは、患者さん自身の思っていることも伝えにくくなる可能性も。そのため、言語だけでなく他の方法でも意思疎通ができるよう、身振り手振りや絵を取り入れた総合的なコミュニケーション方法を学んでいくこともあります。

構音障害のリハビリ

運動障害性構音障害の場合は、口や舌の運動や発声練習、ゆっくり区切って話す方法の訓練などを中心にしたリハビリを行い、発声機能の回復を目指します。いずれの場合も、言語聴覚士の指導によるリハビリで障害の改善を試みると同時に、残された機能で不自由なく生活する方法を学んでいきます。重度の障害が見られる患者さんの場合は、意思疎通を行うために五十音表の使用や声を出すのをサポートする機器を使用することで、不自由ない生活を送れるように勧めることも。ある程度のリハビリを終えて退院した後は、ご家庭での日常生活の声掛けや会話が大きなリハビリになります。

接し方のポイント

言語障害を患った患者さんに対して、ご家族はどのように接していけば良いのでしょうか。失語症と運動障害性構音障害のそれぞれの接し方を紹介します。

・失語症の場合
失語症の場合には、ご家族は言葉を話せなくなってしまった患者さんに対して、小さな子どもや赤ちゃんに言葉を教えるような態度で接してしまいがちです。しかし失語症の患者さんは、赤ちゃんに戻ってしまったわけではなく言葉を上手く扱えなくなっているだけです。患者さんの自尊心を傷つけることのないよう、患者さんの気持ちに優しく寄り添うことが大切です。

・運動性構音障害の場合
運動障害性構音障害の場合は、周りの人からは普通に話しているように聴こえるのに、患者さん本人が「とても話しづらい、ちゃんと話せない」と感じているケースが多々あります。こうしたケースでは、普通に話せていることを伝え、患者さんに自信を持たせてあげるように接してください。

いずれの場合でも、過度の励ましや、「どうしてちゃんと話せないの」といった叱責は絶対禁物です。患者さんが話せないことに対してストレスを感じ、話す努力をやめてしまったら、言語障害はさらに悪化してしまいます。ご家族は患者さんのできることやできないことをよく理解し、行きすぎない適切なサポートを心がけましょう。

失語症で家族ができること

  • あいさつ…「おはよう」「いただきます」といった日常のあいさつは、たとえ重度の失語症であっても、家族が発した言葉をまねて言うことができます。とっさに出る言葉が、リハビリとして効果があり、コミュニケーションのきっかけにもなります。
  • 会話…周囲がうるさくない聞き取りやすい環境で、お互いの顔や表情が分かるような目線で、ゆっくり・理解しやすい言葉で話しかけましょう。間違っても子ども向けの言葉を使う必要はありません。失語症の方の話を聞くときは、何を言おうとしているかを待つ姿勢が大切です。表情やジェスチャーといったサインを観察し、「はい・いいえ」で回答できる質問をこちらから投げるのもひとつです。
  • 書字…名前や住所、生年月日、性別といった簡単な文字を書いてみましょう。模写や文字をなぞることから始め、書ける字が増えたら申込書などを自分で記入させることを目標にしましょう。書いたものを見ながら音読することで、言葉が言えるようになることもあります。
  • 日記・手帳・カレンダー…その日にしたことや些細なできごと、今後の予定などを書くことで、読み書きの訓練となります。はじめは、「8日金曜・病院」「9日土曜・散歩」といったように単語単位での日記で構いません。日記の内容からも会話の話題が生まれます。
  • はがき・メール…自分で書き記すはがきや手紙が好ましいですが、携帯電話やスマートフォンでメールを書くことでも十分なリハビリ効果があります。定型文を書き写す、または家族で一緒に文章内容を考えてあげましょう。
  • コミュニケーションカード・ノート…「話す・書く」といった動作が難しい場合、言葉をあらかじめカードに書いておき、言いたいことをカードで伝えるという方法です。
  • 教材…ペン習字や漢字のドリル、または言語聴覚士作成の失語症用の訓練ドリルなどを利用してもいいでしょう。
  • 地域交流…どうしてもうまく話せないため、外出を避けがちになってしまいますが、コミュニケーションを多くとることは非常に大切です。無理に誰かと話すのではなく、道端の植物を眺めたり、買い物をしたりといったことから始めましょう。デイサービスや保健・福祉施設などでは、失語症の方のためのプログラムや会が開かれていることもあります。

運動障害性構音障害で家庭ができること

  • 姿勢…姿勢が崩れることで、呼吸が正しくできません。椅子に深く腰をかけさせ、足を床につけて背筋を伸ばし、あごを引くことで正しい姿勢を保ちましょう。
  • 首・肩の運動…脳卒中後には、筋肉が緊張状態にあることが多く見うけられます。首・肩といった上半身の緊張が、発声や発音に影響するため、首を左右にかたむけたり肩をあげたりさげしたりして、緊張をほぐしてあげましょう。
  • 深呼吸…鼻から深く息を吸って、口から吐かせましょう。息を吸うときはお腹を前にだし、吐くときはひっこめます。
  • 口の運動
    ①口を大きく開け閉じします
    ②「うーいーうーいー」の口の動きをします
    ③口を閉じ、頬をふくらませる、すぼめるを繰り返します
    ④舌を前に出したり、ひっこめたりします
    ⑤舌先を上唇、下唇、交互につけます
    ⑥舌先を左右の口の端につけます
    ⑦舌先で唇を右回り・左回りでぐるっとなめます。
    それぞれの運動を3回ずつ程度繰り返します。
  • 発声…「あー」と声を出しましょう。無理に大きな声を出させる必要はありません。
  • 発音練習…母音、50音、濁音・半濁音(ガ・ザ・ダ・バ・パ)・拗音(キャ、キュ、キョなど)を、ゆっくりはっきりと言いましょう。2音、3音とつなげる場合にも、どの音もはっきり言えるよう心がけ、長い単語をいうようにします。次には短文、そして長文というようにステップアップし、発音練習をおこないましょう。

体験談

意思の疎通が取れない状態からも回復できた

67歳の父が脳梗塞で倒れ、言語障害が残りました。最初は、話したい意思はあるようでしたがろれつが回らず、ほとんど意思疎通ができない状況でした。急性期から、文字を見せたり、話しかけたり、声を出させたりといった簡単なリハビリを開始し、2週間ほど経って体が回復してきた頃に本格的なリハビリに移行しました。言語聴覚士の指導のもと、発声練習や、カードを見てものの名前を言う訓練などを重ねました。幸いなことに本人のリハビリの意欲が非常に強く、テレビを見ながら声を出したり、家族が会話に付き合ったりして徐々に回復していきました。発症から5年が経ち、今では発症前とほとんど変わらないレベルまで機能回復することができました。

年数がかかっても絶対に諦めない

父が60を迎えた頃に脳梗塞になり、後遺症として半身麻痺と言語障害が残りました。2~3年経過しても単語を間違えることが多く、本人が「日曜」と言いたいつもりでも、実際には「水曜」といってしまうように、意志とは異なる単語が出るようになっていました。しかし、何年もかけてリハビリを続けるうちに、最近ではほとんどコミュニケーションにも問題がないほどまで回復しました。本人は当然のこと、家族としても明日にでもなんとかしてあげたいという気持ちが強くなってしまいがちですが、年単位でゆっくり時間をかけて支えていくことで、確実に回復に向かうんだな、と感じました。現状に落胆したり諦めることなく、希望を持ち続けること。本人の努力と家族の協力は、言語障害と向き合っていく上でとても重要だと思います。

先輩はどのように立ち向かったのか

事例は異なりますが、脳梗塞に立ち向かった先輩方や、その御家族がどんな取り組みをされていたのかを知ることはとても大切です。脳梗塞で倒れ、現在は復帰してプロスカウトをされている、元プロ野球選手の「柏原純一」さんと奥様の体験談をご紹介いたします

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