よくわかる脳梗塞の予防・治療Navi

脳梗塞の後遺症として起こる嚥下障害とは?

脳梗塞の後遺症を乗り越えるために~症状と対策法~

嚥下障害

脳梗塞の後遺症として起こる症状の1つに嚥下障害があります。その症状を正しく理解してサポートすることが早期回復につながります。ここでは、嚥下障害の症状や、患者さんとの接し方の注意点などについてご紹介します。

嚥下障害と脳梗塞の関係性

脳梗塞を発症すると、脳の血管が詰まることで脳機能に障害が起き、血管が詰まった箇所の違いによって様々な後遺症をもたらします。身体の麻痺や発話障害などがその代表的な例ですが、嚥下障害もこのような脳梗塞の後遺症の1つです。

嚥下障害とは、ものを飲み込む動作(嚥下)に関する障害を意味しています。ものを飲み込むということは、舌、口蓋、咽頭、喉頭など喉の周りのさまざまな器官が複雑に連動して成り立っています。脳梗塞によって脳の一部に血管障害が起こると、脳の送った命令が各器官に届かず、嚥下の動作が部分的に損なわれます。これが脳梗塞によって嚥下障害が起こる仕組みです。この時、脳梗塞によって脳のどの部分に血管障害が起こったかによって嚥下障害の症状や、その重さは変わります。

嚥下障害全体のうち、原因が脳卒中だと考えられる方は約4割程度にも上るとされており、実際に脳卒中の症例のうち3割もの患者さんが脳卒中発症直後の急性期に嚥下障害を起こしています。このうち多くの患者さんは1ヶ月程度経てば自然に嚥下機能は正常に回復してゆきますが、慢性期に移行しても嚥下障害が快癒しないケースが5%程度みられます。したがって嚥下障害は脳梗塞の後遺症として代表的なものであり、脳梗塞を発症した患者さんのケアにおいては嚥下機能の低下に留意していく必要があります。

嚥下障害の症状

嚥下障害を起こしている患者さんは、食べ物が飲み込みにくい(嚥下困難)ことを訴える、食事をうまく飲み込めずにむせる(誤嚥)、食事に時間がかかる、飲み込んだ後にせきこむ、食後に痰が絡む、などの特徴的な症状を示します。これ以外に、食事中にものを食べる行為とは直接の関係がないように思われる、食事の後や水を飲んだ後に話している声が普段と違って聞こえるケースなども嚥下障害を疑うべきです。痰が絡んだようなゼイゼイした声が認められる場合、食べ物や飲み物が正常に嚥下されず喉頭部(気管のほう)に絡んでいることが考えられます。

・摂食・嚥下機能と嚥下障害の関係
摂食・嚥下機能(ものを食べ、飲み込む機能)は、以下の5つの段階にわけることができます。
1.認知期…視覚や嗅覚で食べ物を認識する。
2.咀嚼期…食べ物を噛む。
3.口腔期…食べ物を舌で口から喉に送る。
4.咽頭期…食べ物を喉から食道に送る。
5.食道期…食べ物を食道から胃に送る。

嚥下障害の治療においては、この5段階の機能のうちどの部分に障害が起こっているかを正しく診察したうえでケアにあたっていくことが大切です。全身の所見から診断する他、場合によっては造影剤や内視鏡などを用いて障害が起こっている部位を特定する必要があります。

 

リハビリ方法

嚥下障害のリハビリは間接訓練と直接訓練の2つに大別できます。

・間接訓練
主に、嚥下機能に用いる各種の筋肉のトレーニングやマッサージを行うリハビリです。実際の食べ物や飲み物を使わずに、嚥下動作に必要な体づくりを行う方法のため、「間接訓練」といわれています。首や肩、唇、舌、頬のストレッチによってそれぞれの器官を動かしやすくする体操、氷水をつけた綿棒で舌や喉を刺激することで嚥下の反射を起こす練習をするアイスマッサージ、強い深呼吸によって喉周りの筋肉を増強し、嚥下力・痰の排出能力をアップさせる呼吸法などの手法があります。

・直接訓練
間接訓練とは対照的に、直接訓練では、実際の食べ物を使った、飲み込む訓練が行われます。ゼリー、ミキサー食やとろみ食などの嚥下障害向けの特別食を用意して、簡単なものから順に訓練していき、徐々に元の食事に近いものに戻していきます。また、食事中の姿勢の悪さが誤嚥を誘発するケースが多いため、正しい姿勢を保持する訓練も並行して行います。

接し方のポイント

嚥下障害だけに限らず、脳梗塞によって何らかの後遺症が出ている患者さんをご家族がサポートする場合には、「サポートしすぎないこと」が重要であると心に留めておいてください。身体機能は使うことで強化されてゆき、その一方で、使わないとどんどん衰えてゆきます。後遺症のある患者さんを助けようとしてご家族が先回りしてサポートしてしまうと、結局患者さんが体を使う機会を失わせてしまうことになり、後遺症から回復するためには逆効果となりかねません。ご家族はどうしても必要なサポートだけに徹し、できる動作はあくまで患者さん本人に任せましょう。あとはゆっくりと見守る態度でいることが大切です。患者さんが一人でできることが多くなるだけ、介護にあたる家族の負担も減っていきます。

嚥下障害がなかなか快癒しない患者さんについても、焦らずじっくりとリハビリを行っていくことで多くの場合では機能回復が期待できます。患者さんがご自宅で過ごす場合は、ご家族が口腔の体操やマッサージを促してあげると良いでしょう。

体験談

62歳の父が脳梗塞を発症し、嚥下障害を併発しました。発症後しばらくして意識がはっきりしてくると同時に、言語聴覚士の指導のもと嚥下機能のリハビリをスタートしました。頬を膨らませたり、舌を突き出したり、大きな声で発声をする口腔体操のほか、口腔内のマッサージによる嚥下反射の訓練などさまざまな間接訓練の手法を教えてもらいました。その後、ゼリー食から徐々に慣らして食べる訓練を行っていきました。言語聴覚士と看護師とが上手く連携してくれたおかげで、造影剤検査による障害部位の特定をしたうえで、症状に応じた適切なリハビリを行っていただき、早期回復につながりました。本人がまだ62歳ということもあり「絶対に、もう一度口からご飯を食べる」とモチベーションが高かったのも幸いだったと思います。退院後はミキサー食、刻み食から徐々に普通食に戻すことができましたが、食事前の口腔の準備体操は今でも自主的に継続しています。

先輩はどのように立ち向かったのか

事例は異なりますが、脳梗塞に立ち向かった先輩方や、その御家族がどんな取り組みをされていたのかを知ることはとても大切です。脳梗塞で倒れ、現在は復帰してプロスカウトをされている、元プロ野球選手の「柏原純一」さんと奥様の体験談をご紹介いたします

【体験談】「自分が脳梗塞になるとは思ってなかった…」
元プロ野球選手の柏原純一さんが脳梗塞から立ち直るまで >>

当サイトについて

当サイトは、「よくわかる脳梗塞の予防・治療Navi」編集部が管理・運営する情報サイトです。脳梗塞の方やそのご家族に向け、お役立ちできる情報をできる限り分かりやすくまとめております。掲載コンテンツは、信憑性の高い情報を元にオリジナルの記事を掲載しております。
また、当サイトのご活用に関しましては自己責任のうえ、当サイトでは責任を負いかねますことをご了承ください。

よくわかる脳梗塞の予防・治療Naviについて

今日からはじめよう!脳梗塞の再発予防
Symptoms 知っておきたい脳梗塞の種類とその症状
Diseases 脳梗塞と深い関係のあるさまざまな病気