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脳梗塞の後遺症である失認とは?

脳梗塞の後遺症を乗り越えるために~症状と対策法~

脳梗塞の後遺症で見られる代表的な4つの失認

脳梗塞の後遺症の一つに、失認という症状があります。失認とは、脳に正しい情報が取り込まれたにも関わらず、それを正しく認識することができない症状。臨床的に様々なタイプの失認に分類されますが、ここでは視覚失認、相貌失認、聴覚失認、半側身体失認の4種類について詳しく解説します。

視覚失認

視覚失認とは、目の前のものを見るための視力や視野には異常がないにも関わらず、それが何であるかを認識することが困難な症状。認識ができないため、その名前を言うことも説明することもできません。

視覚失認をさらに分類すれば、統覚型と連合型の2つに分かれます。統覚型とは、目の前のものを脳内に浮かべるまでの処理能力に障害がある視覚失認、連合型とは、目の前のものの記憶・知識に障害がある視覚失認です。それぞれ病巣は異なりますが、いずれの場合も「見たものを正しく認識できない」という症状においては共通しています。

視覚失認か否かを判断するために、大きく4つのテストが行われます。1つ目が「物品呼称」。ものを見せて、その名前を言えるかどうかを確認します。2つ目が「物品選択」。ものの名称を聞いて、正しいものを選択できるかどうかを確認します。3つ目が「身振り表現」。金槌などを見せて、その使い方を身振り手振りで表現できるかどうかを確認します。4つ目が「カテゴリー分類」。複数のものを見せて、たとえば用途別などにカテゴリーの分類ができるかどうかを確認します。

視覚失認の症状の程度については、一般に日常生活に大きな支障をきたすことは少ないとされています。なぜなら、視覚失認の多くの場合は写真などの失認症状であって、実物の視覚失認を示す例は少ないからです。実物での視覚失認を示す場合には、触覚なども利用して物品を認識する訓練を行ないます。

相貌失認

相貌失認とは、相手の顔を見ても誰なのかが分からなくなる症状のこと。先天性の相貌失認と後天性の相貌失認とに分けられますが、脳梗塞の場合はもちろん後天性の相貌失認に分類されます。

人間は、進化の過程で相手の顔を瞬時に見分ける能力を高めてきました。相手が敵か味方かを判断するために必要な能力だったからです。そのため、側頭葉と後頭葉に「顔領域」と呼ばれる特別な領域が存在しているのですが、この「顔領域」に何らかの障害を負った状態が相貌失認ということになります。

先天性、後天性、いずれの相貌失認も、治療によって症状を完治させることは難しいと言われています。ただ、相手を特定するために必要な情報は、何も顔だけではありません。体型や声、しぐさ、においなど、様々な情報をもとに、私たちは個人を特定させることが可能です。よって、たとえ相貌失認が治癒することはないとしても、他の方法で相手を特定するトレーニングをすれば、日常生活に大きな支障をきたすことはないとされています。ブラッド・ピット氏のように、相貌失認でありながら世界的に活躍する人物もいるほどです。

聴覚失認

聴覚失認とは、聴覚に異常がないにも関わらず、聞こえている音が何の音なのかを識別できない症状のこと。たとえば、サイレンの音や雷の音、目覚まし時計の音などを聞いても、それが何の音なのか判断できません。

サイレンなどのいわゆる環境音のみを識別できない症状もあれば、人の話言葉だけを理解できない症状、音楽だけを認識できない症状、音の全般を認識できない症状など、その症状の種類は様々です。

聴覚失認の病巣は、側頭葉皮質など。非言語音のみを識別できない症状については劣位半球主に右脳の側頭葉、非言語音も言語音も識別できない症状については両側の側頭葉に障害を負っているケースが多く見られます。

半側身体失認

半側身体失認とは、脳梗塞の影響によって麻痺が生じた側の自分の体について、①麻痺の存在を否認したり、②麻痺が軽度にも関わらず使わなかったりする症状のこと。①のことを「病態失認」と言い、②のことを「不使用」と言います。半側身体失認を発症する側は、ほとんどの場合、左半身。よって病巣は大脳の右半球にあると考えられています。

「病態失認」の場合、仮に症状が重度で歩行が困難だったとしても、自分自身では麻痺がないと思い込んでいるので、無理に歩こうとして転倒する恐れがあります。「不使用」の場合、本来であればリハビリで相応に回復するはずなのに、麻痺側の体を使いたがらないため麻痺症状が改善しない恐れがあります。いずれも家族では見逃しがちな症状のため、医療機関による確実な診断が必要です。

なお、「病態失認」は寝起きや意識が朦朧としているときなど、患者の意識がはっきりしていないときに現れる傾向があります。そのためリハビリは、患者を確実に覚醒させて麻痺の存在を自覚させたのちに行なうようにします。

「不使用」のリハビリは、少々強引に行なっても構いません。麻痺のない側の手を患者のお尻の下に挟んでしまったり、または、拍手などの両手を使わざるを得ない運動をやらせてみたりします。

「病態失認」も「不使用」も、適切なリハビリを行なえば、本来回復すべきレベルまでは機能が回復します。片側の存在について患者とマメにコミュニケーションを取りながら、リハビリを進めていくようにしましょう。

先輩はどのように立ち向かったのか

事例は異なりますが、脳梗塞に立ち向かった先輩方や、その御家族がどんな取り組みをされていたのかを知ることはとても大切です。脳梗塞で倒れ、現在は復帰してプロスカウトをされている、元プロ野球選手の「柏原純一」さんと奥様の体験談をご紹介いたします

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