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行為障害|脳梗塞の後遺症を乗り越えるために

脳梗塞の後遺症を乗り越えるために~症状と対策法~

行為障害

脳梗塞の後遺症というと、麻痺をイメージしがちですがそれだけではありません。生きていくうえで、記憶や感情、計画を立てて実行するような複雑な思考や行動も障害を受けるのです。この記事では、その1つである行為障害について解説します。

脳梗塞と行為障害の関係

脳は生命を維持するための能力と、社会で生 活していく上で必要な能力を持っています。社会で生きていく上で、相手に対してなにかふるまいをするためには、相手の意図をくみとり、適度な距離感で接することが重要です。また、適切に相手と感情のやりとりを行う必要があります。そのためには、言葉だけでなく表情などの言葉以外の意味も理解し、その情報をもとに相手と交流していく必要があるのです。このような社会的な行動は前頭葉が関連していることが明らかになってきています。しかし、脳梗塞などの脳の病気により、前頭葉が損傷されると高次脳機能障害の1つである行動障害を引き起こします。行動障害が引き起こされると、相手の行動や表情から意図をくみとることができず、相手との交流が難しくなってしまうのです。

また前頭葉の障害で生じるもう1つの障害が遂行機能障害です。遂行機能とは、自分が1つの目標を達成するために行動する能力のことです。目標を達成するためには、目標を設定し、計画をたて、その目標に向かって計画を実行し、失敗をしたら行動を修正するなどのことを、効果的に行う必要があります。しかし、脳梗塞などにより前頭葉に障害を受けると、遂行機能障害を引き起こし、目標を設定できなくなったり、どのように行動をしたら良いのかわからなくなったり、あるいは失敗を修正できず、何度も同じ失敗を繰り返してしまうような行動をしてしまうのです。

行為障害の症状

行動障害には、社会的行動障害と遂行機能障害 の2種類があります。

・社会的行動障害

感情のコントロールが出来ず、少しでもイライラしてしまうとそれをおさえることが出来ず、感情を爆発させてしまうことがあります。また、自分の思い通りにならないと大声を出したり暴れたりしてしまうことも特徴の1つです。また、運動能力に異常がなくても、動く意欲がなくなり1日中ベッドに寝ていたり、部屋に閉じこもっていたりと意欲や行動の低下が見られます。感情だけではなく、欲求も抑えることが出来なくなり、支援者や友人など他者につきまとったり、交際をしつこく申し込むなどのケースもあるのです。

・遂行機能障害

人との約束や仕事など、1つ1つに目的や目標を設定できず、約束に間に合わなかったり、仕事を中で投げ出してしまったりするような症状があります。これは、目標を立てたり、目標に向かって計画を立てたりする能力が障害を受けるためで 、同じ失敗を何度も繰り返してしまうこともあるのです。このような症状は、同じ行動は決まったやり方で行うなど、ルーティン化することである程度防ぐことが出来ますが、いつもと異なる依頼や方法を提案すると、出来なくなってしまうという特徴があります。

リハビリ方法

社会的行動障害は、自分の感情がコントロールで きなかったり、欲求がコントロールできなかったりします。しかし、これらは高次脳機能障害の1つとして生じているため、患者さん自身が「誤った行動をしている」という認識はないことが多いのです。そのため、リハビリでは患者さん本人と一緒に、患者さんの行動の何が問題で、それに対してどのように対処すれば良いのかを一緒に考える、行動療法を行います。また、怒りや欲求がコントロールできないという点から、患者さんに誓約書を書いてもらいリハビリを実施することもあります。行動療法の具体的な方法として、正しいことをした場合には褒めたり、励ましたりして、そのような行動を促します。また、反対に誤っている行動を行った場合には、リハビリの担当スタッフがその場から姿を消したり、本人に訓練室から数分間出て行ってもらい、それが誤った行動であることを理解してもらいます。感情が爆発したり、良くない行動をしたりしている時に、それをしかりつけるような態度は、患者さんの理解を妨げ、混乱を増やしてしまい、あまり好ましくないとされています。

遂行機能障害では、1つの物事に対して目標や目的を設定し、行動をたてることが出来ません。そのため、リハビリでは1つの目的に沿って作業の工程を分解して、それをルーティン化します。そのルーティン化を何度も繰り返すことで、新たに目的を設定したり、計画を立てたりする必要がなく、習慣化されるのです。もし、その過程で失敗する部分がある場合は、そこの部分を他者が介助して補います。訓練にもちいられる課題として、実際に何かを組み立てるような作業や、書類の作成など職業生活で必要な訓練などがあります。また、集団で行動する際に、どのようにふるまったらよいのか訓練するために、グループでの作品制作を行ったりします。

接し方のポイント

遂行機能障害は、自分の目的を失い、計画が立てられないなどの症状が出ます。そのため、患者さんの行動のきっかけになるようなタイマーや張り紙、カレンダーへの書き込みなどを使用します。そして、その手がかりを使用して、行動がうまくいった場合には、しっかりと褒めることが大切です。また、飲み薬など毎日行うことに関してはルーティン化します。たとえば、食事をとったらいつも薬を飲むという行動を繰り返し行うのです。そして入院している段階から、患者さんの高次脳機能障害を把握するために、医療スタッフから情報を集め、事前に対策を立てることも大切です。

社会的行動障害は、自分の感情がコントロールできなかったり、欲求が抑えられなかったりします。そのため、医療スタッフや家族、友人に相手をして欲しいがために、つきまとうような行動に出る場合もあるのです。そのような行動が出た場合には、「今の作業が終わるまで待つように」、「あと5分待つように」など、できそうな範囲で患者さんに待つことを経験させます。場合によっては、自分の状況を説明して「相手になれない」とハッキリ断り、依存的な行動を徐々に減らしていくよう行動を修正していくことが大切です。もし、話をしているときに、怒りの表情がではじめた場合には、話題を変えたり、場所を変えたりします。イライラしているときに、説得を試みたり納得させようとしたりすると、感情が爆発してしまうケースが多いため注意しましょう。もし、感情が爆発してしまった場合には、いったんその場から離しましょう。落ち着いた場所に移動したら、興奮が静まるのを待ち、落ち着いたら、感情の爆発が誤りであったことを説明し、感情が爆発した相手に謝罪することを提案します。周囲の刺激が多いと余計パニックになり感情が高ぶるため、刺激が少ない落ち着いた場所に移動するのが効果的なのです。

体験談

私の父は、55歳のときクモ膜下出血で倒れまし た。麻痺は少し残る程度ですみましたが、高次脳機能障害がでてしまったのです。もともと、父は技術職をしており、この病気になってからも早く職場に復帰したいという意欲が大変強くありました。そのため入院中にリハビリを受け、退院後も外来でリハビリを受けながら復職したのです。しかし、父の職場までは駅まで歩き、駅から電車に乗る必要があります。高次脳機能障害である記憶力や注意力の低下により、以前出来ていたことが出来なくなり、計画を立てて仕事を済ませることも出来なくなってしまいました。退院してまもなくのころは、通勤すらままならない状態だったのです。技術職としてずっと同じ仕事をしてきた父でしたが、このことに対して相当落胆した様子だったため、家族みんなで励まし、どんなサポートが良いか考えました。その結果、会社の上司の方の理解もあり、パソコンの操作やスケジュール管理など、これまで本人がやってきた事柄を何度も繰り返し習慣化し、仕事における自分のポジションを確立したのです。私はクモ膜下出血の後遺症は、身体の麻痺だけだと思い込んでおり、幸いなことに父の麻痺は軽度で良かったと安心していましたが、高次脳機能障害という後遺症があることを知り、最初は戸惑いました。しかし、医師やリハビリスタッフの情報提供やアドバイス、会社の上司の方の支えもあり、父が仕事に復帰でき、家族だけではなく医療スタッフや会社の協力も必要だなと痛感したのです。

先輩はどのように立ち向かったのか

事例は異なりますが、脳梗塞に立ち向かった先輩方や、その御家族がどんな取り組みをされていたのかを知ることはとても大切です。脳梗塞で倒れ、現在は復帰してプロスカウトをされている、元プロ野球選手の「柏原純一」さんと奥様の体験談をご紹介いたします

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