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注意障害|脳梗塞の後遺症を乗り越えるために

脳梗塞の後遺症を乗り越えるために~症状と対策法~

注意障害

脳のはたらきは非常に複雑かつ高機能であるため、脳梗塞などによって損傷を受けることで機能が損なわれてしまいます。ここでは、脳梗塞の後遺症の1つである注意障害について、その原因や治療計画などをご紹介します。

脳梗塞と注意障害の関係

注意障害とは、脳梗塞によって脳の特定の領域が損傷を受けた場合に生じる高次脳機能障害の一種です。脳の損傷の箇所や度合いによって症状や重症度は異なりますが、代表的なものとしては、集中力や注意力の低下および欠如、左右どちらか側からの刺激に対して無反応を示すといった特徴的な症状がみられます。

ものごとに注意をする機能は、ものごとを記憶する・思い出す・作業を遂行する・論理的に思考する・コミュニケーションをとるなどといった、より高度な精神的営みの土台となる基礎的な機能です。そのため、注意機能が損なわれると、そうしたあらゆる機能がうまく作用しなくなります。

注意障害を発症した患者さんは、周囲の人から見るとしばしば「無感動になった」「今までは活発で有能な人物だったのに、人が変わったようになった」といった印象を与えます。しかも注意機能が低下しているために、自分自身の注意機能の低下を自覚することも困難な場合も多く、リハビリへの熱意を持続させることが難しいのが難点です。ご家族の粘り強いサポートによって、患者さんがリハビリに対して前向きな認識を持てるような、意識づくりを行ってあげることが大切です。

注意障害の症状

注意障害の症状は、大きく「全般性注意障害」と「半側空間無視」の2種類に分けることができます。

・全般性注意障害

注意の機能は、「維持」「配分」「選択」の3つの機能があると考えられています。これらの機能に対する障害を下記のように呼びます。

1.持続性注意障害…「維持」の機能に関する障害。1つのものごとに集中し続けたり、1つの動作を維持すること(右腕をあげ続けるなど)が困難になります。

2.容量性注意障害…「配分」の機能に関する障害。一度に処理できる情報の量が低下します。長い会話ができない、電話番号などの長い情報が復唱できない、2つのタスクを同時進行できないなどの症状が表れます。

3.選択性注意障害…「選択」の機能に関する障害。複数の刺激の中から注意すべき重要な刺激に注目したり、あるいは不必要な刺激(雑音など)を無視したりといった選択が困難になります。

注意障害は、多くの場合これらの症状のいずれか、または複数を併せ持った形で表れます。3種類の注意障害を全て併せ持っている場合、「全般性注意障害」と呼びます。重篤な場合は、必要なものを探し出せない、火の始末や戸締まりができないといった日常生活上の不自由を生じます。

・半側空間無視

半側空間無視とは、脳梗塞で損傷を受けた側とは反対側から来る刺激に対して無反応を示す症状です。左側に症状が出ることがほとんどですが右側に出ることもあります。典型的な例としては、食事をすると皿の左側だけ食べ残す、左側に方向転換できないためよく知っているはずの道順がわからなくなる、左側のものにぶつかるといった症状があります。半側空間無視は、眼球や視神経の機能上の問題ではなく、脳が左側(右側)に意識を向けることができないために起こる問題です。

リハビリ方法

注意障害は、患者さんが自身の状態を正しく把握するところからリハビリが始まります。まずはCAT・CAS(標準注意検査法・標準意欲評価法)やD-CAT(注意機能スクリーニング検査)などのテストを行って障害の範囲や程度を確認したのち、本人の自覚を促しながら症状に合わせたリハビリを段階的に進めていきます。

リハビリは、患者さんの注意力が低下していることを考慮して、集中しやすい環境を整えたうえで、本人が興味を持てる事柄・簡単な事柄からスタートします。一度に多くのリハビリを進めようとはせずに、1つずつ順番に、かつ少しずつ集中できる時間を伸ばしていくようにします。

またリハビリと並行して、注意力の低下と上手く付き合いながら自立した生活を送っていくための準備も必要です。例えば、1日の行動予定表を作る、注意事項は紙に書いて掲示する、見落としがちな部分に目印をつける、などといった工夫は注意障害の患者さんにとって有効です。特に半側空間無視の症状のある患者さんに対しては、認識しづらい側にある扉に大きな目印を付ける、車椅子の認識しづらい側のブレーキを延長して取り扱いやすくするなどの工夫を加えると、自らの注意力の欠陥を自覚しやすくなり、暮らしやすくなります。

接し方のポイント

注意障害の患者さんは、自分自身の障害に気付いていない方が多いです。まずはご家族の方が異変に気付き、適切な対応をとることが大切です。脳梗塞後に注意障害と思われる症状が見られたら、いち早く専門家に相談しましょう。

リハビリを進めるにあたって、患者さんは集中力が持続せず、なかなか思うようにリハビリが進まず、症状の改善が見られないことがあります。見守っているご家族の方は、焦る気持ちから「どうして出来ないの?」と責めたくなるかもしれませんが、叱責されてリハビリそのものを諦めてしまっては症状のさらなる悪化を招くため、くれぐれも長い目で見守るようにしてください。

体験談

42歳の夫が脳梗塞となり、後遺症として片側下肢麻痺と全般性注意障害を発症しました。回復後すぐにリハビリを開始しましたが、注意障害により集中力や意欲がなかなか持続しないため、歩行訓練は大変苦労しました。しかし、リハビリの専門スタッフは本人の調子を見ながら無理のない範囲でゆっくりと訓練を進めてくださり、5ヶ月間のリハビリ訓練を経て無事退院することができました。自宅でも、注意書きを掲示したり、家族が呼びかけて日常動作の訓練、歩行訓練などを粘り強く継続させたりした結果、軽度の下肢麻痺のみを残して大幅に回復することができました。勤め先も、障害があっても働ける部署へと配置転換してくれたので、発症から1年6ヶ月後には職場復帰を果たすことができ、安心しています。

先輩はどのように立ち向かったのか

事例は異なりますが、脳梗塞に立ち向かった先輩方や、その御家族がどんな取り組みをされていたのかを知ることはとても大切です。脳梗塞で倒れ、現在は復帰してプロスカウトをされている、元プロ野球選手の「柏原純一」さんと奥様の体験談をご紹介いたします

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