よくわかる脳梗塞の予防・治療Navi

脳梗塞の後遺症

知っておきたい、脳梗塞の後遺症について解説しています。

脳梗塞の後遺症を
乗り越えるために

脳梗塞の後遺症と上手く付き合い、上手に克服するヒント

脳梗塞の多くは一度発症すると後遺症を抱えるケースが多くみられます。一度失われた機能は回復しないため、後遺症とは一生付き合っていかなければなりません。後遺症がどのくらい残るか、どの部分に発生するかは、脳梗塞が起きた際に、脳のどの部分が損傷を受けたかによって変わります。脳の損傷部位が少なく、脳梗塞発症後も後遺症を抱えずに済む人がいる一方で、重度の障害を負いリハビリでも完全に回復しない人がいるのも事実です。

しかし、脳梗塞の後遺症があったとしても、リハビリを続けることで日常生活や調節がしやすくなり、不自由なく生活できる程度まで改善させることは可能です。大切なことは、脳梗塞の後遺症を受け入れ、生活のなかの問題点や不自由となることを把握し改善していくことです。脳梗塞のリハビリは早期に開始するほど効果が高いと言われています。後遺症を受け入れずリハビリの開始が遅くなれば、本来回復できる機能も失ってしまうかもしれません。

また、たとえ回復の見込みがなくとも、残された機能で不自由なく生活を送るための訓練は必要です。理学療法士や家族と協力して社会復帰を果たす患者さんもたくさんいます。まずは自分や家族に起こった後遺症の状態を把握し、前向きにリハビリに取り組むことが重要です。そのためにも、後遺症について基本的な知識を押さえておきましょう。

後遺症との向き合い方

回復と予防という観点から後遺症と向き合う

ナース

夫と二人三脚で取り組みました(70代 女性)

夫が倒れたのは10年前。左脳が損傷し、危ないとのことで、すぐに病院に向かいました。「右半側空間無視」という身体障害が後遺症として残ってしまったのですが、言葉が話せるようになったのが不幸中の幸いです。

私は元々、学校で体育を教えておりましたので、主人のリハビリも一緒に取り組み、少しずつ良くなってくるのを見るのが毎日の楽しみでした

先輩方がどのように向き合ってきたのか

同じ境遇に立ち向かった先輩方や、その御家族がどんな取り組みをされていたのかを知ることはとても大切です。脳梗塞で倒れ、現在は復帰してプロスカウトをされている、元プロ野球選手の「柏原純一」さんと奥様の体験談を見てみましょう

【体験談】自分が脳梗塞になるとは思ってなかった…」
元プロ野球選手の柏原純一さんが脳梗塞から立ち直るまで >>

脳梗塞の後遺症の種類

神経障害詳しくはこちら

神経障害

脳梗塞の後遺症でメインとなるのが神経障害です。脳は体のあらゆる器官と神経でつながっています。一度損傷して機能を失うと回復は難しく、さまざまな部位に神経障害が起きてしまいます。

障害の特徴と対応

感覚障害

手足の感覚が鈍くなり、温度変化を感じにくくなります。物にぶつかっても気が付かず、火傷やけがもわかりにくいため、治療が遅れるリスクがあります。

【主に見られる症状】
  • 熱さや冷たさににぶくなる
  • 痛みを感じなくなる
  • 物に触れている感触がない
  • 体にしびれを感じる

視野障害

目の筋肉に問題が生じ視点がずれて二重に見える障害や、片側のみ(もしくは4分の1)の視野が欠けてしまうものがあります。住み慣れた家でも物にぶつかりやすくなるため、退院後も注意が必要です。

【主に見られる症状】
  • 人やものが二重に見える
  • 左右の視界のうち、どちらかが欠けて見える

嚥下障害

口の周りの筋肉をつかさどる神経に障害が出て、食べ物や飲み物を飲み込めなくなります。食べたときや飲んだときにむせやすく、気道に異物が入り込み誤嚥性肺炎を起こしやすい状態です。

【主に見られる症状】
  • 飲食の際に飲み込むことがうまくできない
  • 意識せずによだれが垂れてしまう
  • 気管に食べ物が入ってしまう・むせる

排尿障害

自分の意思で排尿をコントロールできず、排尿したくてもできない、我慢したいのに我慢できなくなります。排尿の際にも勢いが弱く、尿を出すのに力が必要な場合や、すべて出し終わるのに時間がかかる障害も出てきます。

【主に見られる症状】
  • 頻繁にトイレに行くようになる
  • 失禁をしてしまう
  • 尿が出にくくなる

運動障害

脳の前頭葉や頭頂葉は運動や感覚をつかさどる部分であり、脳梗塞により損傷が起きてしまうと、運動障害が起きます。脳梗塞の障害で多いのが片側麻痺で、損傷した脳とは反対側の手足に問題が出ます。

【主に見られる症状】
  • こまかな動作や作業ができない
  • 手や足の動きを止めることができない
  • 口が思うように動かせない

言語障害

脳幹や脳幹につながる神経線維に損傷を受けた場合、発音ができなくなることがあります。声を発することができないだけで、周りの人とコミュニケーションをとること自体は可能です。

【主に見られる症状】
  • 相手が話す内容を理解できない
  • 伝えたいことが言葉にできない
  • 文字が書けない

疼痛性障害

神経や感覚には問題がないのに、痛みを感じる障害です。筋肉痛のような痛みが続くケースや、強い痛みが出るケースもあります。実際に痛みやしびれはないのに、患者さん本人は痛みを訴えるというのが特徴です。

【主に見られる症状】
  • 頭、腹部、背中、胸などが痛む
  • 実際は痛みやしびれがないのにこれらの症状を訴える

片麻痺、半身麻痺

体の左右どちらかが麻痺し、全く、もしくは少ししか動かせなくなる障害です。動かない手足は骨が弱くなり、筋肉も固まっていきます。リハビリである程度は改善されますが、麻痺が残れば杖や車いすなどが必要です。

【主に見られる症状】
  • 体の左半身、もしくは右半身が麻痺している
  • 左半身、もしくは右半身が全く動かない
  • 左半身、もしくは右半身が少ししか動かない

痙縮(けいしゅく)

筋肉が緊張することにより、手や足が動かしづらい・勝手に動くといった後遺症のことを痙縮といいます。具体的な症状としては、手が握ったままとなってしまい開かない、ひじが勝手に曲がる、足の指が曲がってしまうなど。片麻痺・半身麻痺と同時に、見られる後遺症になります。

【主に見られる症状】
  • 肩やひじといった関節が動かない
  • ひじ、手首などが曲がった状態のまま伸びない
  • かかとがつかない
  • 手や足の指が曲がったまま伸びない

高次脳機能障害詳しくはこちら

高次脳機能障害

記憶力や注意力に関する部位に障害を負うことで、感情をうまくコントロールできない、相手の言葉を理解できないなど、日常生活に困難が生じます。神経麻痺とは異なり、周囲の理解が得られにくいのも問題です。

障害の特徴と対応

記憶障害

過去のことが思い出せない、また新しくものを覚えることが難しくなります。軽度であれば最近のことだけを忘れますが、重度となれば直前の記憶も困難になり、自分の覚えている話しかできません。

【主に見られる症状】
  • 昔あったことを思い出すことができない
  • 新しくおこった出来事を覚えられない
  • 直前の出来事をすぐに忘れてしまう
  • 同じ内容の話を繰り返して話す

注意障害

集中力を持続できず、複数の仕事ができなくなります。多くの場合、15分以上集中力が続きません。脳の損傷とは反対側となる部分を見落とし、脳の右側に損傷を受けた場合には、左だけ食事を残したり、ぶつかったりする症状が出ることもあります。重度になると左側を見ることさえできなくなります。

【主に見られる症状】
  • 集中することができなくなる
  • 仕事上においてできていたことができなくなる
  • 複数のことが同時にできなくなる

行動障害

計画が立てられず、何度も同じ失敗を繰り返します。重度になると相手の会話や指示がわからず、1つの物事に固執するケースもあります。

【主に見られる症状】
  • 体に異常はないが日常的な行動ができなくなる
  • コップに水をそそげなくなる、など

失行症

日常生活の動作がぎこちなくなり、ペンで文字が書けない、歯磨きができないなどの問題が生じます。

【主に見られる症状】
  • 箸を使うことができなくなる
  • 靴ひもを結ぶことができなくなる
  • 道具を使うことができなくなる
  • 得意だったスポーツが著しく下手になる

失語症

人の名前や色がわからず、知っているはずの言葉が出てきません。本人や家族も障害を理解するまでに時間がかかり、精神的に負担が大きい障害です。

【主に見られる症状】
  • 発したい言葉が浮かばない・単語でしか話せなくなる
  • 思っていることと異なることを話す
  • 同じ言葉を繰り返す・同じ言葉がいえない
  • 大勢の中で話を聞き取れない
  • 早口・複雑な文章の理解が難しい
  • ものや人の名前が出てこない
  • 単語の意味が分からない
  • 漢字が思い出せない
  • 計算ができない

言語障害

相手の言っていることが理解できず、自分の言いたいことを伝えられません。症状が進行すると文字が書けなくなり、話すこともできなくなります。

【主に見られる症状】
  • 相手の言葉が理解できなかったり、伝えたい事が言葉にできない
  • 文字が書けなくなる

精神的症状詳しくはこちら

精神的症状

脳梗塞を発症後、感情のコントロールが難しくなる場合や、夜間せん妄や認知症・うつ病などの合併症を伴うこともあります。そのため、周囲の人から「性格が変わってしまった」と思うほど行動や性質が変化することがあります。

障害の特徴と対応

感情障害

感情をうまくコントロールできず、突然怒ったり泣き出したりします。思ったことをすぐに口に出してしまう、自分勝手なことを言うなど、行動が子供っぽくなる特徴があります。この障害がもとで周囲の人とのトラブルに発展する恐れもあるため、注意が必要です。

【主に見られる症状】
  • 小さなことでも笑う・怒るといった感情失禁がおこる
  • 突然暴言をいう・わがままになる
  • 相手や他人の気持ちを考えることができなくなる

うつ病

脳梗塞の後遺症に精神的なショックを受け、うつ病の合併症を発症しやすくなります。脳の損傷によってうつ症状が出る場合もあります。

【主に見られる症状】
  • 憂鬱な気分や状態が続く
  • やる気が出ない
  • 外に出ることや人に会うことができない
  • 眠れない

夜間せん妄

夕方から夜にかけ、意識障害が出ます。幻覚や幻聴が現れ、夜中に歩き回ったり、言葉が不自然になったりします。環境が変わったことによるストレスも影響しており、一時的なことが多いです。

【主に見られる症状】
  • 主に夜間になると幻覚・幻聴にみまわれる

認知症

脳の問題がある部分と、それ以外の正常な部分との差が大きく、一部のみに症状が出るのが特徴です。よくなったり悪くなったりを繰り返し、その日のなかでも変化があります。

【主に見られる症状】
  • 物や人の判断はできるが記憶力が著しく低下する
  • 一般的な認知症と同様の症状がみられる、など

後遺症の回復・改善方法詳しくはこちら

脳梗塞の後遺症は、急性期の時点で約5割の方が併発するといわれています。しかし、維持期に入る1年経過時点では、後遺症が残る人の割合は約1割程度にまで減少。4割近くの方は日常生活に戻れるとされているのです。

そのため、脳梗塞を発症し後遺症が併発してしまったからといって、悲観的になる必要は決してありません。

ただし、何もせずに後遺症から回復するわけではありません。適切な治療とリハビリを継続的におこなうことで、元の日常生活に戻ることは誰だって可能なのです。

後遺症を改善し、日常生活に戻るためにはどんなことをおこなうべきかを知り、いち早い日常生活への復帰を目指しましょう。

後遺症を残さないためには

肩・ひじの回復

まずはひじに力を入れて曲げましょう。その後は肩を回してひじを真上に上げ、どの方向にも腕やひじを動かします。人によっては回復が非常に遅い可能性もありますが、リハビリを止めると関節が固まるため、毎日関節を動かし続けてください。

手・指の回復

指を開いたり閉じたりしやすくするマッサージを行って、なめらかに動かせるようにしましょう。5本まとめて開いたり閉じたりはできますが、1本ずつ動かすには長い時間が必要です。指で丸を作れるようになれば、ほとんどの日常行動を送れるようになるでしょう。

下肢・下半身の回復

杖や装具など、歩行を補助する道具があります。そのため極端に筋力が落ちない限りは十分歩けるようになるのです。回復の度合いによって装具を変える必要があるため、どれほど歩けるようになったかは必ずチェックしてください。

なぜ脳梗塞の後遺症は残りやすいのか

脳梗塞とは脳の血管の一部が詰まることにより、脳に血液が循環しなくなる命にもかかわる重篤な病です。脳内が虚血状態となることで、脳細胞は活動を停止。その部分の脳が担う身体機能の低下につながり、後遺症として残るのです。

一度活動を停止した脳細胞は、ふたたび生き返ることは残念ながらほぼないといわれています。そのため、脳梗塞における後遺症は残りやすく、また長きにわたり向き合っていく必要がある理由となっているのです。

後遺症をあきらめない

虚血状態といえど、その部位すべての脳細胞が活動停止するわけではありません。生き残った細胞が時間をかけ、復活していくというケースは往々にしてあります。

また、たとえ脳の細胞が活動を停止したとしても、人間の体はすごいもので、その機能を補うためのさまざまな働きかけが見られるのです。

たとえば、失った機能を補うために、他の脳の部位が身体に働きかけるという反応は、医学的にも確認されています。また、元気な脳細胞が新たな神経を作り、つなぎあわせ、活動停止した脳細胞を介さない形で身体機能を補おうとする反応も見られます。

いずれも、ただ待っているだけで改善が見られるものではありません。失われた機能を補うための反応を活性化させるためには、リハビリや適切な治療、再発予防への対策が重要となるのです。

後遺症は本人にとってもご家族にとっても、非常につらいものです。しかし、だからといって「後遺症は良くならない」と決めつけるのは尚早です。回復を信じ、できること、やれることを行うといった行動こそが、後遺症の改善につながる第一歩となることを忘れてはいけません。

後遺症の最適な対処法

損傷のおこった脳の部位によって、後遺症の種類や度合いは大きく異なります。脳梗塞の後遺症は、前述したように多くの種類が存在し、個人差が大きいのが特徴なのです。

そのため「これさえやればいい」といった明言は非常に難しく、それぞれの後遺症とその症状に合わせて、対処法を考えるべきだといえます。

サポートする家族の方は、どんな症状で何ができないのか、何に困っているのかを判断し、それらをサポートできるよう心がけましょう。回復や社会復帰のためのリハビリはもちろんのこと、個人でできることを探すのも重要な対処法のひとつ。

実際に脳梗塞を経験された方は「回復のためであれば、できることは何でもする」といった行動を起こすことで、後遺症の克服をされている方が数多くいらっしゃいます。

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