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急性期に必要な脳梗塞の治療とは?

これでコワくない! 脳梗塞の予防&治療の最前線

おさえておきたい脳梗塞治療の基本

急性期に必要な
脳梗塞の治療

脳梗塞の治療は、発症後すぐの処置が大切だと言われています。最初は症状が軽かったとしても、時間とともに悪化する可能性が高いうえ、症状の改善にもっとも効果的な治療は、発症直後にしか行えないためです。発症後の経過に大きな影響を持つ、急性期の治療方法について見ていきましょう。

脳梗塞の「急性期」とは?

脳梗塞を発症した直後から、1~2週間程度までを「急性期」と呼びます。手足がしびれる、言葉が話せない、呂律が回らない、意識が低下するといった症状が見られ、それらが進行する可能性が高い、不安定な時期です。詰まってしまった血管のはたらきを回復させ、正常な血流を取り戻すとともに、一時的に脳への血液供給がストップしたことによって起こるさまざまな影響を緩和するための治療が行われます。

治療法のなかには、発症から4~5時間以内に投与が必要なt-PAをはじめ、時間的な制約があるものも多いです。そのため、急性期、特に発症直後に正しい処置ができたかどうかが、その後の経過を大きく左右します。リハビリについても、患者さんの状態に応じて、可能であれば当日から、遅くとも翌日には手足を動かし、日常生活を送れるようになるためのリハビリが開始されます。

急性期に求められる治療

脳梗塞の急性期、特に発症直後に必要なのは、血栓を取り除いて血流を回復させるための治療と、症状が進行したり合併症を起こしたりして重症化するのを防ぐ治療です。その後も、症状が安定するまで、血栓が再びできないように、容体に合わせた薬剤を用いて治療を進めていきます。主な治療方法は以下の通りです。

血流を回復させる「t-PA静注療法」

脳に十分な血液が行き届かなくなると、その先の細胞がダメージを負います。被害を最小限に食い止めるためは、一刻も早く原因となった血栓を取り除き、血流を回復させることが大切です。発症から時間が経ちすぎると、脳は回復が不可能なまでの障害を受け、重大な後遺症をもたらしてしまうでしょう。

t-PA(プラスミノーゲン・アクチベータ)は、脳梗塞を引き起こした血栓を溶かし、血流を回復させるための薬です。静脈点滴で投与されるため、特殊な技術や器具等は必要ありません。高い効果が期待できる治療法であり、国立循環器病センター脳血管内科では、t-PA静注療法を行った患者さんの過半数(53%)に症状の改善が認められました。

ただし、この治療法は発症から4~5時間未満でなければ受けることができません。これは長時間の血流停止によってダメージを受け、もろくなった血管が、薬の作用

に耐え切れずに脳出血を起こす危険があるためです。療時間を考慮すると、発症から2時間以内に病院に搬送された場合にのみ有効な手段と言えるでしょう。発症時刻が不明な場合は投薬ができないため、この治療を受けられるのは患者さん全体の1~2%程度です。しかし、近年は、動脈にカテーテルを挿入して直接血栓を取り除く「メルシー・リトリーバー」の保険適用が認められるなど、急性期治療の可能性は広がっています。

脳のむくみを改善する「抗脳浮腫薬」の投与

脳梗塞を起こした血管の周囲は液状成分が溜まりやすく、むくみ(脳浮腫)を起こしやすい状態です。脳浮腫を放置すると、体増えた脳が頭蓋骨に収まり切らず、一部が隙間から押し出される「脳ヘルニア」を発症します。脳ヘルニアになると、生命維持機能を司る脳幹が圧迫され、意識障害や感覚障害を招くほか、死に至ることもあります。

脳浮腫が広がるのは、脳梗塞の発症から数日という、急性期間中がピークです。症状が悪化する危険性が高いため、早いうちに、脳に溜まった水分を排出しなければなりません。抗脳浮腫薬としては、「グリセロール」や「マンニトール」などが代表的です。点滴で投与することで、むくみを改善し、脳の内圧を抑えることができます。

活性酸素を除去し、脳を保護する「脳保護療法」

脳梗塞で血液の流れがストップすると、脳が「虚血」という血流不足の状態になり、活性酸素(フリーラジカル)を発生させます。活性酸素とは、不安定で、ほかの物質と化合し酸化させやすい性質を持つ物質です。血中のコレステロールと結びつくと「酸化LDL」となり、血管や脳神経の細胞を傷つけ、動脈硬化や血栓を引き起こします。

つまり、脳梗塞を起こした後は活性酸素が増加しており、栄養不足に陥った脳細胞がさらに死滅し、別の血栓もできやすいという非常に危険な状態なのです。「脳保護療法」は、有害な活性酸素から脳を守るために行われます。

代表的な薬品が「エダラボン」です。点滴で投与することによって、活性酸素を除去し、死滅した細胞に囲まれて正常な活動ができなかった神経細胞のはたらきを助けてくれます。発症後24時間以内に治療を受けた患者さんのうち、80%が介助なしで生活できるようになったというデータもあり、非常に高い効果が期待できる治療法です。ただ、腎臓への負担が大きいため、もともと腎障害を持つ方への投薬には十分注意する必要があります。

脳梗塞のタイプに合わせた治療

急性期は、脳梗塞のタイプに合わせた治療法を選択することも大切です。
たとえば、頸部や頭蓋骨を走る大きな動脈が止まる「アテローム血栓性梗塞」の場合は、t-PA静注療法が効果的と言われています。発症後、時間が経過してしまっていたら、抗血小板剤「オザグレル」や抗凝固剤「アルガトロバン」などで血栓ができるのを抑えつつ、脳保護薬「エダラボン」で活性酸素を除去し、重症化を防ぎます。梗塞が脳の細い動脈で起こる「ラクナ梗塞」の場合もほぼ同様です。

「心原性脳梗塞」は心臓でできた血栓が脳へ飛んで詰まるタイプの脳梗塞で、こちらも血栓を溶かす作用のあるt-PA静注療法が有効とされています。発作から時間が経過していれば、心臓に血栓をできにくくする「ワルファリン」の投与を行い、再発を防止します。

脳梗塞の再発予防のために

脳梗塞の急性期における治療は、直後であれば血栓そのものを溶かすt-PA静注療法、その後は血液が固まるのを防ぐ効果を持った薬剤療法が主です。医師の診断と指示に従って、治療とリハビリを続けましょう。

また、脳保護療法の項でご説明したように、活性酸素は血栓をつくり、動脈硬化や脳梗塞を引き起こす原因です。脳梗塞による虚血だけでなく、食べ過ぎやストレス、喫煙なども活性酸素を増やすと言われています。急性期を過ぎ、容体が安定してからも、本人や家族が十分気を配り、活性酸素を発生させない生活習慣を心がけてください。急に食生活や生活リズムを変えるのが難しい場合は、サプリメントを活用するのもおすすめです。

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