よくわかる脳梗塞の予防・治療Navi

脳梗塞リハビリにおける予後予測

長く向き合う脳梗塞発症後の生活

予後予測に基づいてリハビリプログラムを作成

脳梗塞で入院し血栓を取り除いた後は、患者ごとのプログラムに基づいてリハビリを行なうことになります。このプログラムを作成する際に必要となる基準のことを「予後予測」と呼びます。

専門用語や数字に関する話が大半となる難しい概念なので、ここでは概略的なイメージをつかみましょう。

予後予測とは

理学療法士や作業療法士、言語聴覚士などのリハビリの専門家は、患者の症状を直感的に判断してリハビリを行っているわけではありません。入院時の状態・患者の年齢・入院後の状態などを基にし、一定のリハビリを行なった後の「回復の予測」を立てます。この予測から逆算された緻密な計画の元、リハビリプログラムは作成されるのです。

この回復の予測のことを「予後予測」と言います。

地図に例えるならば、「回復」が目的地、「リハビリプログラム」は目的地に向かうための地図になります。「予後予測」は目的地に向かうためにどれくらいの時間がかかりどういった手段をとるべきか、目的地に着くためのナビゲーションだといえるでしょう。

予後予測の方法は、大きく分けて3種類。「二木の予後予測」「脳画像からの予後予測」「運動機能からの見た予後予測」をそれぞれ具体的に見ていきましょう。

二木の予後予測

日本で最も広く知られており、かつ信頼されているのが「二木の予後予測」です。二木の予後予測では、「入院時」「発症2週間後」「発症1ヶ月後」に分け、各時期にどれだけの身体機能等を持つかによって、将来的な歩行能力に関する予測を立てます。たとえば入院時を基準とした場合には、以下のような予後予測を立てます。

【二木の予後予測~入院時~】
入院時の状況 歩行能力の予測
ベッドの上で自立生活がおこなえる 1ヶ月以内に屋内自立歩行が可能となり、やがて大部分が屋外歩行可能となる
食事・尿意の訴え・寝返りのうち2項目が可能 2ヶ月以内に屋内自立歩行が可能となり、やがて大部分が屋外歩行可能となる
麻痺側の足の伸展挙上が可能
「発症前の歩行能力が屋内歩行以下」
「麻痺側の足の伸展挙上が不能」
「60歳以上」
のすべてを満たす
自立して歩行することが困難となり、大部分が全介助を必要とする
「意識障害レベルが刺激で覚醒する(2桁の意識障害)である」
「麻痺側の足の伸展挙上が不能」
「70歳以上」
のすべてを満たす

上記と同様に「発症2週間後」「発症1ヶ月後」の予後予測基準も設定されています。

なお、上記に該当しない状態については、基本的に「二木の予後予測」で予後予測を立てることは困難とされています。(全介助で59歳以下など)

脳画像からの予後予測

「二木の予後予測」に加えて、脳画像を基にした脳細胞の損傷範囲および損傷部位によって予後予測は立てられます。

普通に考えれば、損傷範囲が広ければ予後が悪いのではと思いがちですが、実際には広さに比例することはありません。損傷部位とその損傷範囲による専門的かつ総合的な判断が必要となります。

脳画像からの予後予測においては、大きく次の3種類に分ける考え方があります。

  • 損傷範囲が小さくても予後が良くない部位
    例)放線冠、内包後脚、脳幹など
  • 損傷範囲の大きさと比例して予後が決まる部位
    例)中大脳動脈前方枝を含む梗塞、前大脳動脈領域の梗塞など
  • 損傷範囲が大きくても予後が良い部位
    例)前頭葉前方の梗塞、中大脳動脈後方の梗塞、後大脳動脈領域の梗塞、小脳半球に限局した片側性の梗塞など

なお小脳梗塞などのように、予期せぬ改善がみられる脳梗塞については、初期症状の画像診断では予後予測を立てることは困難と言われています。

運動機能から見た予後予測

発症から一定期間の運動機能に応じ、予後における歩行能力を予測する方法です。考え方は「二木の予後予測」とほぼ同じ。座位の状態等を基に下肢近位機能や体幹機能、年齢、認知機能などを基準にして予後予測を立てる方法です。

体幹機能を基準とした予後予測に関して、「座位保持良好」の定義に当てはまった患者のうち約9割において歩行可能となっています。

運動機能から見た予後予測については、極めて簡素な予後予測基準なのですが、精度は極めて高いとして注目されています。

目標の立て方

リハビリ計画を立てて実行していくうえで、予後予測は必要不可欠なプロセスとなっています。

しかしながら、予後予測において自立歩行が今後できないと判断されたからといって、自立歩行を諦めたリハビリ計画は理想的ではありません。

いかなる状態からも自立歩行ができるようになったケースはいくつもあり、予後予測に到達したらリハビリは終了では、それ以上に回復する可能性の芽を摘むことにもなってしまいます。

リハビリの目的地である「回復」を目指すための予後予測設定は「理論上の予後予測よりも少し上」を設定することが大切なのです。

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