よくわかる脳梗塞の予防・治療Navi

脳梗塞の家族ができること

長く向き合う脳梗塞発症後の生活

家族の脳梗塞に備える心構えを把握します

脳梗塞の介護は、考えるよりも大変です。どんな後遺症が残りうるのか、社会的なサポートとしてどんな支援があるのかなど、知っておきたい基礎知識をご紹介します。自宅療養に不安を感じるご家族は、一通り目を通しておきましょう。

家族の心構え

脳梗塞になった家族を目の当たりにすると、全てをサポートしたくなるでしょう。思いやりの気持ちは重要ですが、できる内容まで手を貸すのは考えものです。どんなことは本人ができるのか、どんな状況になったらサポートが必要なのかを医師や看護師に聞いておくと安心です。家族に寄り添いリハビリを見守る、心のゆとりを持ちましょう。

介護に全力をかけてしまうと、サポートする家族の負担が大きくなります。そのため、自分の生活を維持しながら良好なバランスを維持していく、協力体制が求められます。家族の特定の人にだけ負担が集中しないように、介護分担の話し合いも必要になるでしょう。近くに近親者がいる場合は、同居者以外のサポートも検討します。また、公的支援を活用して、自分の時間を確保することも大切です。

脳梗塞をめぐる家族の接し方、考え方、準備などについて、ポイントごとに見ていきましょう。

面会時の心構え

入院直後や手術直後に面会する場合は、ひとえに家族は冷静さを保つことが重要です。場合によっては意識がない可能性もあるほか、酸素吸入器や点滴等の医療器具につながれた非日常的な光景は、家族にとって非常につらいものです。しかし、そこで周囲が狼狽してしまうと発症者本人は不安感を抱いてしまいます。家族が「大丈夫」といえば、本人も安心するもの。ご家族の方が冷静さを保ち、しっかり見守ってあげることが大切です。

病院でのリハビリに際して

脳梗塞による後遺症は、ご家族にとってショックなことではありますが、それ以上に本人のショックが数倍も大きいことを忘れてはいけません。時にはリハビリに対し、やる気が起きないということも十分に想定されます。家族からのサポートが何よりの励ましになりますが、本人に過大な心理的負荷を与えないような接し方を心がけましょう。「やらなきゃ治らない」「早くよくなりたいから頑張るしかない」など、家族の熱が入りすぎることで、逆に本人にとってはリハビリが苦痛になる可能性があります。理学療法士や作業療法士からの指導を元に、家族は焦らずにゆっくりとサポートしていくことが大切です。

帰宅かリハビリ継続かの選択する

急性期病棟での基本的なリハビリ期間が終了すると、「自宅に戻る」か「リハビリ専門病院に転院する」かの、どちらかを選択することになります。いずれも状況によりますが、後遺症がまだ強く残っている場合には、リハビリ専門病院への転院が一般的。ソーシャルワーカー等の意見を仰ぎ、リハビリをスムーズにおこなうことができます。もちろん、中には自宅でのリハビリを選択する方もいらっしゃいます。家族との時間をゆっくり過ごしながら日常生活の回復に励むことは、本人にとってもリハビリへの活力となる可能性があります。

病院から自宅に帰る場合の環境作り

急性期病棟やリハビリ専門病院でのリハビリが終わると、以後は在宅療養に入ります。住み慣れた家に久しぶりに戻ることは、患者本人はもちろんご家族にとっても大変うれしいことです。しかし、以前の自宅環境のままでは生活ができない可能性もあることを考慮に入れなければなりません。例えば車椅子での生活を余儀なくされた場合には玄関や階段をどうするか、手に障害が残っている場合には蛇口をひねることも困難な可能性があります。介護保険制度や障害者自立支援制度などを活用し、ケアマネージャーや福祉事務所などと密な打ち合わせのうえ、患者本人が安心して生活できる環境作りを行ないましょう。

家族ができることとは?

脳梗塞になった家族の介護では、後遺症やリハビリに対する理解が大切です。脳梗塞の後遺症として、大きく3つの症状があげられます。

1.神経障害

脳の細胞や神経にダメージが残ると、運動麻痺や感覚麻痺のリスクがあります。手足が動かしにくかったり、細かい手作業がしにくくなったりと発症前に当たり前にできていたことも、簡単にはできなくなります。嚥下障害や排尿障害なども生活に大きく影響を及ぼす後遺症になります。

2.高次脳機能障害

記憶や認知、判断力などにトラブルが出て、物事をスムーズに進められない状態になってしまいます。同時に複数の物事を進めようとしても難しく、作業効率が悪くなります。夕食の準備をしている途中でネットの調べものにふけったり、家事をしているときに宅配便がくるなど中断されると元の作業を思い出せなくなったりするなど、一緒に暮らす家族がサポートなくしては物事を完結しにくい後遺症がでてきます。また、まっすぐ歩くのが難しくなったり読み書きに支障がでたりすると、復職が難しい状況になってしまうリスクもあります。

3.精神障害

脳がダメージを受けることで、性格が変わったような印象を受けることがあります。イライラして暴力的になったり、大声をだして怒鳴ったりする場合もあり、介護する家族の身の安全にも関わってきます。脳にダメージが残っていない場合でも、身体の変化に耐えきれず、うつ状態になってしまうことも多いです。メンタルヘルスを扱う医療機関での診察や不安を軽減する治療を受けるなど、具体的な対応が必要になります。

後遺症やリハビリへの理解と併行して、脳梗塞の家族が安心して生活できる環境作りを進めることも大切です。その際は必要に応じて、公的支援も検討しましょう。脳血管疾患は、介護保険の利用条件に入っています。一定の条件を満たす患者さんは介護保険の対象になるため、家族の負担も軽減されます。

要介護認定を受けるためには、書類の提出を求められます。市役所の窓口や支援センターに介護認定を受けたいことを伝えると、申請書がもらえます。主治医の見解を記入する欄があるため、医療機関との連携も必要です。申請書を提出して受理されると、認定調査に入ります。市区町村役場から委託を受けた訪問員と実際に会って、どの程度の介護が必要か具体的な判断を進めていきます。

介護のポイントは?

介護のポイントは、後遺症の内容や家族の環境によって変わってきます。状況に応じた介護の進め方について理解しておきたい内容を、一通り確認しておきましょう。

・後遺症がある場合

自宅療養を始めてからも、脳梗塞のリハビリは続きます。本人の主体的な取組みがないことには良い結果は難しく、モチベーションが問われます。脳梗塞の後遺症として心のトラブルが出てしまうと、前向きに行動しにくくなります。家族の献身的な声かけがリハビリのモチベーションを左右するため、接し方は重要です。また、麻痺が残った場合でも、ひたむきなリハビリで改善できる見込みがあります。医師や理学療法士、看護師と連携を取り、できるかぎりのサポートを検討しましょう。

脳梗塞の後遺症で言語障害が残ると、上手く感情が表現できない問題がでます。知的水準が維持できているケースでは、本人の気持ちに配慮した声かけを意識しましょう。本人としては、言いたいことが上手く表現できないことに、もどかしさを感じています。「なにを言っているのかわからない」「どうして、はっきりしゃべらないの?」などの無神経な言葉は、プライドを傷つけてしまうリスクがあります。社会から孤立した状況で家族の理解も得られないと、リハビリへの意欲が下がるものです。家族と会話する機会が減っていくと、さらに障害レベルや神経障害が悪化する悪循環になりかねません。話しかけるときには、なるべく短くまとめてはっきり伝えるように意識します。スポーツが好きなら野球の試合結果、庭いじりが好きなら開花情報など、本人の関心が深いところを中心に掘り下げるのがおすすめです。また、言葉だけでは上手く会話ができない場合は、ジェスチャーや写真を交えて意思疎通を図るのも良いでしょう。

・急な感情の起伏がある場合

感情の大きな起伏が見られる場合、周囲のサポートが求められます。どんな状況になると突発的な行動につながるかを理解して、考えられる原因を改善していきましょう。攻撃的な態度の背景に本人の不安が関係しているケースもあります。後遺症への理解を示して温かく接することで、衝動的な感情が治まることも多いです。

怒りや暴力など攻撃的な行動は、身近な相手に対してより顕著に現れる傾向があります。メインの介護者が決まっている場合、他の家族のサポートも大切です。通院サポートやリハビリの送り迎えなど分担できる介護を手伝って、リフレッシュできる時間を作りましょう。また、脳梗塞の後遺症から認知症を併発した場合は、医療機関のサポートも考えていきます。家族で対処できないことは専門家に指示を仰ぎ、医療的観点に沿った対処を意識しましょう。

・仕事で介護が難しい場合

脳梗塞の後遺症は介護認定対象のため、公的支援が検討できます。家族だけでは十分な介護が難しい状況であれば、プロの支援も考慮しましょう。急に家族が脳梗塞を発症して介護が必要になってしまうと、自分だけでなんとかしようと抱え込む方も多いです。しかし、仕事と介護の両立はストレスになりやすく、様々なトラブルの引き金となることもあります。介護休暇や転職を検討すると、収入が安定しません。療養費やリハビリ費用もかさむ状況で、収入が途絶えるのは避けたいことです。介護にかかる経済的な問題を考慮しても、仕事と介護の両立手段を考えることが重要になります。

利用するサービス内容は、状況に応じて判断されます。ケアマネージャーが作成したケアプランをもとにリハビリなどを進めていくことになるため、よく話し合って決めましょう。自宅をメインに考えた在宅系サービスのほか、施設に頼る方法もあります。医療や介護サービスが整っている施設なら、重い後遺症が残ってしまった場合でも安心できるでしょう。公的支援を検討するにあたっては、主治医の判断やリハビリ担当者の意見も考慮されます。どんなサービスを活用したら生活が安定するのか、専門的な観点から考えた意見も聞いて、前向きに検討しましょう。

【体験談】家族が脳梗塞に…

介護をする家族に大事なこと

ある時、高齢の父が視力の低下を訴えました。本人も家族も、年齢的な理由での視力低下だと思っていたのですが、のちに父はトイレで立ち上がれなくなり、半身麻痺を伴った脳梗塞を発症しました。命に別状はなかったのが救いでしたが、以後は家族全員が連携し、父の回復をサポートする生活が続いています。現在は無事退院もして自宅介護を続けていますが、どうしても母への負担が大きくなってしまうため、ヘルパーさんやデイホームなどを定期的に利用。はじめは嫌がっていた父も、徐々にそのリズムに慣れていきました。脳梗塞における家族のサポートで重要な事は、介護保険のサービスや制度的に利用できるものはすべて利用すること。そして介護が迷走しないよう、感傷的・感情的にならないこと。その2点がとても大事だと思います。

脳梗塞を経て家族に連帯感が生まれました

私は34歳という若い年齢で脳梗塞になり、片麻痺の状態で2週間ほど入院しました。懸命のリハビリの甲斐もあり、麻痺したほうの足も少しだけ動くように。ひとりで立ち上がることができない状態だったものの、退院して自宅へ帰ることができました。2週間の短い入院生活でしたが、この間の出来事は、私と私の家族の人生を大きく変えました。働き盛りであった大黒柱の私が大病にかかったことで、それまで希薄だった家族の結束力が高まった気がするのです。強い絆で結ばれたと思います。同居する家族だけではなく、多くの親族も私の回復のためなら何でもするという気持ちであったと後々に聞き、感動しました。入院中は正直、半ば自暴自棄になってしまったこともあったのですが、私の知らないところで闘っていた家族に、今となっては深く感謝しています。

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