脳梗塞と深い関係のある さまざまな病気
脳梗塞と関連深い吃音症
吃音症とは?発達性吃音と症候性吃音の違いとは?
1990年4月、東京大学医学部や複数の大学・病院などが協力して、脳梗塞を原因とした「吃音症」についての症例研究を発表しました。
吃音症とは、言葉を話す上で支障を来す言語障害の一つを言います。具体的には、話している最中に単語や音節などを異常に繰り返したり、または引き延ばしたりする、もしくはそれらを防ごうとして逆に言葉に詰まってしまうような状態です。
吃音症は通常、幼い頃に発症します(発達性吃音)が、成人後に脳の病気などによって吃音症状が現れた場合は「症候性吃音」とも呼ばれます。
失語症と吃音症は違う病気?
失語症もまた、脳梗塞の後遺症として有名な“言葉に関する障害”の一つですが、症候性吃音症と失語症の間には少しばかり“違い”が存在します。
失語症とは、文字通り「言葉を失う症状」であり、例えば「リンゴ」について話そうとしても、頭の中で「リンゴ」という単語が“失われて”しまいます。その為、「私は昨日……を食べました(リンゴという単語が出てこない)」という状態に陥ってしまうのです。
一方、吃音症は、「わわわたしは、リン、リンゴを食べーましした」というように、話したい内容は頭の中で生み出せるものの、実際に口から発しようとした時に上手くいかなくなってしまう、とされています。
とは言え、言語障害を専門に扱う研究者の中には、他の障害と吃音症を明確に判別することは困難であると考えている人も多いようです。
脳梗塞に伴った吃音症の症例報告
研究チームが報告した症例では、56歳(脳梗塞発症当時)の会社員男性に、脳梗塞によって左半身のマヒと吃音症が発症しました。
男性の吃音症では、単語の頭部分などを“繰り返す”ことが主症状であり、また脳梗塞になる以前は、言語障害と見られる症状はなかったとされています。
CTやMRI検査によって、男性の脳梗塞は脳の中でも「脳梁」と呼ばれる部分に発生していることが分かり、また複数の言語的テストから、他の言語障害を伴わない単独の症候性吃音症という珍しい症例であると判明しました。
吃音症が具体的にどういうメカニズムで発症するのか、まだ確定的なことは解明されていません。しかし、この極めて珍しい症例は、脳梁と言語障害との間に、何らかの関連性があるかも知れないという証拠の一つとして、貴重な報告と考えられています。